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健康情報誌「消化器のひろば」No.9

健康情報誌「消化器のひろば」No.9

気になる消化器病

気になる消化器病 腹部膨 ー機能性機能性ディスペプシアを中心にー

腹部膨満をきたす疾患には大別して2種類あります。 触診や打診そして腹部超音波検査やCTスキャンなどの検査で異常が指摘できる器質性疾患(腹水貯留、腹部腫瘍あるいは腸閉塞など)と、異常が指摘できない機能性疾患があります。 この機能性疾患で腹部膨満を発生させる代表的疾患が機能性ディスペプシアです。

ストレス図

機能性ディスペプシアは聞きなれない病名と思われるかもしれませんが、その症状が世界で最初に記載されたのは我が国の“徒然草”であると筆者は主張しています。 すなわち、徒然草では「物言わぬは腹ふくるるわざなり」と記載されていますが、これは「悩みや言いたいことを言わずに胸にしまいこんでいるとストレスになり胃腸の運動を抑制して腹部膨満が起こる」ことを意味しており、まさに機能性ディスペプシアのそのものであると考えています。

このようにストレスが腹部症状を発生させる理由は、胃腸が考える臓器であるからです。 胃腸には大脳の神経細胞と同じと考えてよい神経細胞が2層にびっしりと敷き詰められ、腸管神経叢が形成されており、その神経細胞の数は大脳の神経細胞の数とほぼ同じと考えられています。 この胃腸の神経細胞と大脳の神経細胞は自律神経(脊髄からの交感神経と延髄からの迷走神経)で繋がってネットワークが形成されており、「脳腸相関」と呼ばれてします(図)。 したがって、大脳が感じたストレスはこのネットワークを通じて胃腸の運動や分泌に影響を与え、逆に胃腸の不快感などの情報は常に大脳に反映されストレスになりうるために、大脳と胃腸の間で悪循環が形成されることがあります。 これが機能性ディスペプシアなどの症状が悪化する原因の一つです。この「脳腸相関」は、我が国ではすでに言語に定着されていることを思い起こせば理解が容易になると思います。 すなわち、「腹が立つ」とか「腹わたが煮えくり返る」などの言葉は大脳が感じたストレスが胃腸の運動異常を起こすことを表現した言葉であり、我が民族の感受性の高さが作り出した言語であると筆者は考えています。

現在のようなストレス社会では腹部膨満の原因が機能性ディスぺプシアによる可能性が高く、医師から「検査では異常がありません」と説明されてもがっかりする必要はありません。 もし、検査で異常がないのに症状が持続する場合には機能性ディスペプシアを疑って消化器専門医への受診をお勧めします。 幸いなことに、機能性ディスペプシアの唯一の治療薬が我が国で世界に先駆けて開発され認可されているため、腹部膨満の改善が期待できると思います。

脳腸相関図

医療社団 さくらライフ
錦糸クリニック院長

松枝 啓

医療社団 さくらライフ 錦糸クリニック院長 松枝 啓近影

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