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健康情報誌「消化器のひろば」No.10

健康情報誌「消化器のひろば」No.10

気になる消化器病 アルコールと消化器疾患

皆さんはお酒を飲まれますか。適量のお酒は、ストレスの緩和など健康にプラスに働く効能も指摘される一方、過度の飲酒は心血管障害や糖尿病、脳神経障害などさまざまな病気の原因や危険因子となります。古くは兼好法師が徒然草に、「酒は百薬の長とはいえど、万の病は酒よりこそ起れ」と記述しています。

お酒

 肝障害や膵炎など、過度な飲酒と密接に関係している消化器の病気は少なくありません(表)。口から入ったアルコールは食道を経て胃に達します。このため口腔から咽頭、食道、胃の粘膜は人体の中で最も高濃度のアルコールに直接さらされます。アルコールは主に肝臓で代謝されて、有害なアセトアルデヒドが産生されます。肝障害はアルコールによる臓器障害の中で最も高頻度です。肝臓のみならず膵臓でもアルコールは代謝されます。過度な飲酒は、急性膵炎ならびに慢性膵炎の最も多い原因です。一方、過剰飲酒は消化管や肝臓がんなどのリスクを上昇させることも明らかとなっています。特にアセトアルデヒドを分解する酵素の働きが弱い体質にもかかわらず過剰飲酒を続けた場合には、口腔・咽頭がんや食道がんのリスクが非常に高くなります。過剰飲酒者に多い喫煙も、発がんリスクをさらに増加させます。

 これらの病気の多くは、特に自覚症状もなく進行していきます。このため、早期に発見するためには検査を受ける必要があります。AST(GOT)やALT(GPT)、γ-GTPといった肝機能検査以外にも、MCVと呼ばれる赤血球の大きさの数値が、慢性的な大量飲酒により上昇することが知られています。一方、多くの消化器系のがんは採血ではわからず、内視鏡検査や超音波検査、CT検査といった画像検査によって、初めて見つけることができます。

 それでは、適度な飲酒量とはどのくらいでしょうか。厚生労働省が定めた「健康日本21」では、節度ある適度な飲酒量として、1日に20グラムのアルコールを目安として挙げています。これはビールなら500mL、日本酒なら1合程度となります。しかし、適量は個人差が大きく、また男性に比べて女性は、より少ない飲酒量、短い飲酒期間で臓器障害を起こしやすいことにも注意が必要です。飲酒量をコントロ―ルするための有効な方法として、筆者は「飲酒日記」をつけることをお勧めしています。いつ、誰と、どこで、何を、どれくらい飲んだかを記録し、ご自身の飲酒習慣を把握してもらうのです。一方、アルコールが直接の原因である場合には、飲酒量を減らす節酒ではなく、断酒(一時的ではなく、継続的な禁酒のことを言います)が必要となります。皆さんにはぜひ、お酒と上手に付き合っていただきたいものです。

表 適度な飲酒が引き起こす消化器の病気

東北大学病院
消化器内科 准教授

正宗 淳

東北大学病院 消化器内科 准教授 正宗 淳

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