English

健康情報誌「消化器のひろば」No.10

健康情報誌「消化器のひろば」No.10

知っておきたい治療薬 消化器病の薬

炎症性腸疾患のくすり

炎症性腸疾患(IBD)とは主に潰瘍性大腸炎(UC)とクローン病(CD)を総称する疾患名です。比較的若い方を中心に好発し、原因が不明のうえ、症状の悪化(再燃)と改善(寛解)を繰り返すため、難病として知られています。最近では多くの新薬が登場し患者さんの治療経過や生活の質もずいぶんと改善されてきていますので、主な治療薬を解説したいと思います。

個別化医療図

*5- アミノサリチル酸(5-ASA)製剤*
 症状が軽い場合にまず使用される製剤で、サラゾスルファピリジンとメサラジンがあります。小腸や大腸の炎症を抑える薬で、経口剤・注腸剤・坐剤薬があり、薬の種類により作用する腸の範囲が異なるため、疾患や病変範囲に応じて適切な薬を選択し使用します。寛解導入のみでなく、維持にも使用されるIBDの基本薬です。

*ステロイド(副腎皮質ホルモン)剤*
 5-ASA製剤では効果が不十分な、活動性の高い中等症以上の患者さんに使用される薬で、経口剤以外に注射・注腸剤・坐剤があります。病変局所で過剰となった免疫反応や炎症を強力に抑え、比較的短時間で効果を示します。全身性に投与する場合は、症状に応じ適切な用量が使用されます。寛解導入効果は高い一方、寛解を維持する効果はなく、長期の使用は糖尿病・脂質異常症・緑内障・白内障・骨粗鬆症を併発する場合もあり注意が必要です。

*免疫調節薬*
 ステロイド剤の減量や中止に伴って再燃する場合に使用する薬で、アザチオプリンとメルカプトプリンの経口剤が用いられます。病的な免疫反応の是正によりステロイド剤からの離脱やその後の寛解維持に効果を示すため、難治例ではよく使用されます。副作用としては嘔気や倦怠感が多く、稀に肝障害や膵炎、極端な白血球減少と脱毛を生じる場合があるため、服用中は定期的な血液検査が必要です。

*抗TNF-α抗体製剤*
 炎症を引き起こす蛋白質のTNF-αに体内で結合し、その作用を抑えることにより寛解導入と維持効果を有する薬で、インフリキシマブ(点滴)とアダリムマブ(皮下注)があり、既存の治療で十分な改善や効果が得られない場合に使用されます。投与前には結核やB型肝炎など検査し、治療継続中も感染症には注意が必要です。

*免疫抑制薬*
 T細胞の関わる免疫反応を強力に抑制することで速効性にUCの炎症を改善させる薬で、タクロリムスやシクロスポリンがあり、ステロイドが効かず入院を要するような場合を中心に使用されます。薬の血中濃度を測定し使用量を適正に調節する必要があります。副作用では一過性の手足の震えやほてりが多く、腎機能の低下にも注意が必要です。

一次・二次治療:FOLFOX/FOLFIRI+分子標的薬図

兵庫医科大学
炎症性腸疾患内科 教授

中村 志郎

兵庫医科大学 炎症性腸疾患内科 教授 中村 志郎近影

ページトップへ