一般のみなさまへ

健康情報誌「消化器のひろば」No.14-4

JAK阻害薬

胃酸を抑える薬の正しい知識

胃液中に分泌される胃酸は、元来、食物の消化を助け、胃内に侵入してくる細菌を殺菌するという人体にとって有益な作用があります。しかし一方で、食道、胃、十二指腸の粘膜を傷害し、潰瘍などの病気の原因となります。そこで、胃酸分泌を抑えるお薬であるプロトンポンプ阻害剤(PPI) が、世界中で広く使用されています。

肝がんの新しい薬

世界中で広く使われているPPI

 胃酸分泌を抑えるお薬には、薬局で処方箋なしでも購入できるH2ブロッカーと、医師の処方箋が必要なプロトンポンプ阻害薬(PPI) があります。このうちPPIは胃酸分泌抑制作用がより強力で、胃・十二指腸潰瘍、逆流性食道炎などの治療薬として、現在、世界中で最も広く使用されているお薬の一つになっています。

PPIは怖いお薬?

 PPIは安全性が高いお薬として知られていましたが、近年、PPIに関連する副作用が多数報告され、その中には、肺炎、骨折、腸管感染症を始め、認知症、腎障害と多岐にわたる病気に関してPPI使用との関連性が報告されています。こうした副作用は極めてまれなものかもしれませんが、世界中のPPIの服用者数が膨大なため、全体として影響を受ける患者さんの数がそれなりにいることが推測されます。PPIは広く使用されていることから、その副作用に関しては国民の関心も高く、週刊誌やインターネットの記事でも取り上げられることがあり、こうした情報に触れると「PPIは怖いお薬」と考えがちです。

適切に使えば強い味方になるお薬です

 しかし、実際にこれらの報告で直接的に証明されたものはほとんどなく、結果の解釈には注意が必要です。一方で、PPIは酸抑制効果が強く、長年にわたり多くの患者さんの治療に使用されてきた実績があり、適切に使用されれば非常に有用なお薬となります。

気になる場合は主治医に相談を

 こうした状況ですので、逆流性食道炎治療、鎮痛剤服用中の消化性潰瘍の再発予防など、PPIの必要性が高い状況で使用される場合は、副作用に関してはあまり気に掛ける必要はないでしょう。一方でPPIは非常に広く使用されており、その中には漫然と使用されているケースもありえますので、必要最低限の量を、必要な期間で使用することが重要です。今後もPPIにまつわるいろいろな情報が出回るかもしれませんが、過度に不安に思う必要はありません。PPI使用継続に関して気になる方は、一度、主治医の先生に相談してみることをお勧めします。


 

秋田大学大学院医学系研究科
消化器内科学・神経内科学講座 教授

飯島 克則

秋田大学大学院医学系研究科 消化器内科学・神経内科学講座 教授 飯島 克則近影
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