機能性ディスペプシア(FD)

患者さんとご家族のためのガイド

機能性ディスペプシア(FD)ガイドQ&A機能性ディスペプシアについてお話しします。

Q1 機能性ディスペプシア(FD)ってどんな病気ですか?

ディスペプシアという言葉は耳慣れないし、とても難しそうで舌をかみそうな言葉ですね。そもそもディスペプシアとは、胃の痛みやもたれなどの不快な腹部の症状を指す医学用語なのです。

「胃が痛い」「胃がもたれる」というディスペプシア症状で受診される患者さんはたくさんおられますが、内視鏡検査などで調べても胃がんや胃潰瘍などのはっきりとわかる病気が見つからない場合が少なくありません。このような患者さんでは、胃の消化作用や収縮運動、さらに感じ方など、胃のはたらき(機能)がわるくなったことが症状の原因ではないか、との考えから「機能性ディスペプシア」(英語表記functional dyspepsiaの頭文字をとって「FD」といいます)という病名が生まれました。すなわちFDとは、
「症状の原因となる明らかな異常がないのに、慢性的にみぞおちの痛み(心窩部痛)や胃もたれなどのディスペプシア症状を呈する病気」を指します。

これまで、このような患者さんには「慢性胃炎です」とお答えしてきましたが、慢性胃炎とは文字どおり、胃に炎症がある場合をいいます(胃の炎症の多くはピロリ菌によって起こります)。しかし、胃に炎症がなくても症状があることや、逆に胃に炎症があっても症状がないことも多く、胃の炎症は必ずしも症状と関連しないことが明らかとなってきました。FDと慢性胃炎は異なった次元の病気なのです。

機能性ディスペプシアの定義

症状の原因となる器質的、全身性、代謝性疾患がないのにもかかわらず、慢性的に心窩部痛や胃もたれなどの心窩部を中心とする腹部症状を呈する疾患

Q2 FDと診断される患者さんはどれくらいいるのですか?患者さんの生活にはどんな影響があるのでしょうか?

FDの患者さんがどれくらいいるかは、健康診断を受けた人(健診受診者)を対象に調べるか、病院などの医療機関にかかった人(病院受診者)を対象に調べるかによって結果がだいぶ異なります。健康診断では受診者のうち11~17%に、一方、病院にかかった人では44~53%にFDが見つかるといわれています。これらの数値から見ても、FDがとてもありふれた病気であることがわかります。
FDの患者さんは、日ごろの生活の質(QOL)が障害されています。しかし、治療によって症状がよくなれば、QOLも回復するので、適切な治療を受けることが大切です。
また、FDでは症状がどれくらい続いているかということよりも、症状がどれくらい強いかということのほうがQOLに影響します。ですから、とくに症状の強い人は、がまんせずに早めに治療を受けられることをお勧めします。

FDの人の割合

健康診断を受けた人(健診受診者)のうち11~17%、病院にかかった人(病院受診者)のうち44~53%

Q3 どうしてFDになるのですか?

病気になる原因や状態を「病態」といいますが、FDの病態はとても複雑で、1つだけの原因でFDになるわけではありません。下に示すような原因が1つ、あるいはいくつか組み合わさって症状が起こると考えられています。
このうち、とくに重要なのは1~4ですが、そのほかの因子も互いに影響し合い、病態を複雑にしています。症状の原因・誘因はとても多彩と考えられているのです。

FDを引き起こす原因

1.胃・十二指腸運動が障害された場合
これには胃排出の異常と胃適応性弛緩の異常があります。胃排出とは食べた物を胃から十二指腸へ送ることであり、胃適応性弛緩とは食事のときに胃が拡張して食べ物を貯留する能力のことです。胃排出は遅くても早過ぎても症状と関連する可能性があり、胃適応性弛緩の障害は早期飽満感(通常の食事量が食べきれずに、すぐにお腹がいっぱいになること)と関連しています。

2.胃・十二指腸の知覚過敏が生じている場合
知覚過敏とは少ない刺激で症状が出やすいことです。FD患者さんでは、健常者より軽い胃の拡張刺激で症状が出現します。また、十二指腸での胃酸や脂肪に対して知覚過敏となって症状が出ることがあります。

3.心理的要因(とくに不安や虐待歴)がある場合
脳と腸管は相互に密接に関連しており、これを脳腸相関と呼びます。不安・抑うつ症状や生育期の虐待歴を背景にして、胃や腸の運動や感覚に変化が起こることがあります。

4.胃酸が原因となる場合
胃から分泌された酸が胃や十二指腸の粘膜を刺激して、胃や十二指腸の運動や知覚に影響を与えることがあります。

5.ヘリコバクター・ピロリ感染が原因となる場合
ピロリ菌の除菌により症状が軽快することがあります。

6.遺伝的要因
生まれつきFDになりやすい人がいます。

7.サルモネラ感染など感染性胃腸炎にかかった人
これらの人はFDにかかりやすくなる可能性があります。

8.アルコール、喫煙、不眠などの生活習慣の乱れ
生活習慣の乱れがFDの原因となることがあります。このため生活習慣を見直すことで症状が改善することがあります。

9.胃の形態
とくに瀑状胃(ばくじょうい:胃の上部が拡張し変形したもの)など胃の変形が症状と関わっていることがあります。

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