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「ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎」に対する除菌治療に関するQ&A一覧

「ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎」に対する除菌治療に関するQ&A一覧

制作
日本消化器病学会H.pylori診断治療委員会

疫学
Q.感染経路は本当に口うつしなどで感染するのですか?
Q.ピロリ菌は除菌しなくても自然に感染が無くなることはないのですか?
内視鏡診断
Q.『ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎』と診断するのに、感染診断と内視鏡検査の順番は決まっていますか?
Q.内視鏡検査の実施時期はいつの時点までが有効ですか?たとえば3か月前の内視鏡検査所見により『ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎』と診断してもよいですか?
Q.内視鏡検査を行う場合、ピロリ感染診断を行う場合、除菌治療を行う場合における病名をどのように考えるべきですか?
Q.他の施設において内視鏡(検診・健診を含めて)で胃炎と診断された患者さんに対して感染検査や除菌治療ができるのですか?
Q.健康診断で内視鏡検査をおこなって胃炎の疑いがあった場合は、病院でもう一度内視鏡検査をする必要がありますか?
Q.2次除菌する際も内視鏡検査による再度の確認が必要ですか?
Q.内視鏡検査でなくX線検査で胃炎、胃潰瘍の診断をされる先生がいます。 胃炎の確定診断はX線検査で可能ですか?
Q.胃炎の確定診断時は内視鏡検査が必須で、胃潰瘍の時は内視鏡検査は必須でないと理解してよいか?
Q.胃癌で無い事を内視鏡検査で確認とありますが、医師により内視鏡技量に差があり胃癌を見落として、除菌治療という事にならないかと懸念しています。
Q.内視鏡検査が必須である理由を教えてください。
Q.「胃炎」の種類については限定されるのですか。種類まで記載しなくてはならないのか?
Q.ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎が適応追加になりましたが、ピロリ菌感染を確認するための内視鏡検査は保険適用にならないのではないのか?
Q.今回、ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎に対する除菌治療が追加適用になりましたが、効能効果に関連する使用上の注意に「内視鏡検査によりヘリコバクター・ピロリ感染性胃炎であることを確認すること」とありますが、「胃潰瘍または十二指腸潰瘍における除菌療法」では内視鏡は必須になるのですか?
Q.厚労省の通達通りに、全ての症例で内視鏡検査等を実施したことを診療報酬明細書に記載しなくてはならないのか?
Q.今回のヘリコバクターピロリ感染感染胃炎の効能追加に関して、内視鏡がない施設では除菌ができないか?
Q.ヘリコバクターピロリ感染胃炎を確認する場合に内視鏡検査をするときの病名はどうしたらよいですか?
Q.内視鏡検査をどうしても嫌がる患者には、内視鏡検査をせずにピロリ菌の感染診断を行った場合には、診断検査代は保険適用になりますか?
Q.萎縮性胃炎を認めなくても除菌治療ができますか?
Q.胃潰瘍、胃炎がないにも関わらずピロリ菌陽性の場合の除菌治療はどうすればよいのか?
Q.ヘリコバクターピロリ感染胃炎を疑う内視鏡所見を教えてください。
HP診断
Q.胃癌リスク検診等でピロリ感染陽性と判明していた場合、再度ピロリ感染診断の必要はあるのでしょうか?
Q.追加効能取得前に自費で除菌治療をされた患者に対して、除菌判定や二次除菌は保険適用とすることができるのでしょうか?
Q.内視鏡検査とピロリ菌感染診断検査の期間が空いたことで何か影響があるのですか?
Q.ヘリコバクター感染胃炎の感染診断法には、迅速ウレアーゼ試験、 鏡検法、培養法、抗体測定、 尿素呼気試験、便中抗原測定があるが、学会として推奨している検査法を教えて欲しい。
Q.去年はピロリ菌陰性であったのに、今年は陽性といわれたので除菌したいという患者がいますが、そういうことが起こり得るのですか?
Q.除菌判定のためには、PPIを4週以上休薬しなければならないのですか?
Q.内視鏡検査で確定診断した際の所見・結果とは、具体的にどのように記載すればよいのですか。 診断日なども必要ですか?
Q.ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎の診断ですが、内視鏡と除菌診断を同日に行っても保険上は大丈夫ですか?
Q.除菌治療前の感染診断検査で陰性だった場合、ピロリ菌感染診断検査の費用を保険請求できますか?
Q.ABC分類のD判定でピロリ陰性と出ている場合でも除菌してもいいのですか?
Q.以前から、胃炎の病名で薬剤を投与されている患者に、ピロリ菌の診断検査をしたら、保険の適用となるのですか?
Q.いきなり内視鏡検査を実施するのは患者に負担がかかるので、尿素呼気試験等を最初に実施してスクリーニングしたい。その際、尿素呼気試験を実施したがピロリ菌陰性だった場合に、診療報酬明細書にどのように記載すればいいのですか?
病理
Q.胃炎の診断は内視鏡検査による診断で良いのですか?あるいは生検組織によるシドニー分類による病理学的な診断が必要ですか?
Q.内視鏡検査では生検組織を採取する必要はあるのですか?
適応
Q.除菌適応に年齢制限を行なう必要性があるのでしょうか?
Q.内視鏡検査を行い、ピロリ菌感染の検査を行えば全て除菌治療が可能ですか?
Q.急性胃炎の場合は除菌治療は適応外ですか?
Q.若年者では萎縮性胃炎まで進展している症例は少ないが、表層性胃炎の場合でも除菌は可能ですか?
Q.胃癌撲滅が目的であるならば、内視鏡検査を必須とせず、もっと手軽に若年者でも除菌できるようにすべきではないですか?
Q.胃潰瘍の診断名で除菌治療に失敗し、その後、胃炎の病名で除菌治療した場合、保険上、初回の除菌治療と見なされますか?
Q.ピロリ菌の除菌治療ですが、他院へ内視鏡検査を依頼した場合などでもピロリ菌の感染診断で陽性がでれば使えますか?
Q.他の施設で、内視鏡を実施し胃炎と言われたと言って患者さんから除菌を希望された場合(内視鏡を実施されたという証明が無い場合)は除菌だけを当院で実施することは可能ですか?
Q.診断名は「ヘリコバクターピロリ感染胃炎」と「慢性胃炎+ヘリコバクター感染症」どちらでもよいですか?
Q.「慢性胃炎」の効能では、医学管理料225点を取っていたが、今後、慢性胃炎の患者さんに除菌治療をする際、病名を「ヘリコバクターピロリ感染胃炎」に変更しなければならないと思いますが、この点について保険上どのように対応すればよいでしょうか?
治療
Q.1次除菌、2次除菌の順番は変更できるのでしょうか?また、クラリスロマイシン耐性菌であることが判明している場合にはどうするのでしょうか?
Q.1次除菌に失敗後に長い期間が空いても2次除菌を実施できるのでしょうか?また、以前に他施設で除菌治療を受けたとの自己申告がある場合に、2次除菌を行ってよいのでしょうか?
Q.小児は何歳から除菌可能ですか?
Q.3次除菌の抗生物質は、どんな種類の抗生剤を用いるのが良いのですか?
Q.クラリスロマイシンの耐性化が問題です。2次除菌のレジメから始めたいのですが可能ですか?
Q.1次除菌実施後、除菌失敗したと判明後、どのくらいの期間があくと2次除菌を実施できなくなるのですか?例えば10年前に除菌を行った患者様が来院され、除菌したことがあると自己申告しか情報がない場合でも、2次除菌のレジメを使ってよいですか?正確な実施状況が明確で無い場合は、1次除菌から始めなくてはならないのですか?
Q.高度の萎縮性胃炎で、ピロリ菌の菌量が少量と考えられる場合も除菌した方がよいですか?
Q.除菌としてではなく逆流性食道炎で長期間PPIを飲んでいる患者さんが、肺炎でクラリスロマイシンとアモキシシリンをのんだ場合、除菌されますか?
Q.除菌治療を行う場合、胃潰瘍・十二指腸潰瘍での使用とヘリコバクター・ピロリ感染胃炎での使用で除菌薬に違いがありますか?
Q.過去に除菌治療が成功していて、数年後、再度ピロリ菌が見つかった場合、また一次除菌からしなければならないのですか?
Q.一次除菌と二次除菌の間の期間について教えてください。
Q.除菌治療の適応年齢について、高齢者(たとえば80歳代)は除菌治療を行なう必要性があるのですか?
除菌後
Q.ピロリ感染胃炎の除菌成功後に注意しなければならないことを教えてください。
Q.除菌治療後、PPI又はH2受容体拮抗薬を続ける必要がありますか?
Q.除菌治療による慢性胃炎の内視鏡的な改善効果はどの程度の期間で判断しますか?
Q.除菌治療終了後、再感染に気をつけるために観察期間は何年ほどとった方がよいのでしょうか?
Q.除菌成功患者が安易に胃癌にならないと思い込み、健診受診の件数が減る可能性もある。学会として何かしらの啓蒙は考えているのですか?

疫学

Q.感染経路は本当に口うつしなどで感染するのですか?
A.ピロリ菌の感染経路はまだはっきり解明されていませんが、ピロリ菌はヒトや一部のサルの胃内からのみ分離培養されていますので、ヒトからヒトへの経口感染であると推定されています。感染経路については、以前は不完全に処理された生活用水に混入したピロリ菌による感染が疑われていましたが、衛生環境がよくなった現在では、ピロリ菌感染者の唾液を介した感染が考えられています。ピロリ菌の感染獲得時期については、胃酸の分泌や胃粘膜の免疫能の働きが不十分な幼小児期に成立すると考えられています。この幼小児期の感染経路の大きな要因として、離乳食が開始される生後4~8か月の時期の保護者による'離乳食を噛んで与える行為'が考えられています。なお、成人における感染は急性胃粘膜病変を起こすことはありますが、一過性感染で終わる可能性が高いと考えられています。
Q.ピロリ菌は除菌しなくても自然に感染が無くなることはないのですか?
A.ピロリ菌は一度持続感染が成立すると自然消滅することは稀で、除菌や胃粘膜の高度萎縮などの環境変化がないかぎり感染が持続すると考えられています。なお、臨床現場では、内視鏡的に萎縮性変化を認めるにも関わらず、種々の検査でもピロリ菌陰性を示す方がおり、この中には自己免疫性胃炎(A型胃炎)も含まれていますが、本人も知らないうちの抗菌薬内服などにより自然の除菌されているケースもあります。一方、ピロリ菌の感染獲得時期は幼小児期と考えられており、成人では一過性感染で終わる可能性が高いと考えられています。

内視鏡診断

Q.『ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎』と診断するのに、感染診断と内視鏡検査の順番は決まっていますか?
A.内視鏡検査が先と決められています。感染診断および除菌治療の対象は『内視鏡検査によって胃炎の確定診断がなされた患者』(医療課長通達参照)となっているので、感染診断を先に行うことはできません。
Q.内視鏡検査の実施時期はいつの時点までが有効ですか?たとえば3か月前の内視鏡検査所見により『ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎』と診断してもよいですか?
A.内視鏡検査には胃炎の確定診断と同時に器質的疾患とくに胃癌のチェックという重要な意義があります。したがって、現時点で胃癌を認めないというためには、6か月以内に内視鏡検査が実施されている必要があると考えられます(注意: 6か月以内という期間は学会の見解であります)
Q.内視鏡検査を行う場合、ピロリ感染診断を行う場合、除菌治療を行う場合における病名をどのように考えるべきですか?
A.1) 内視鏡検査については従来と同様で、患者さんの症状等によって内視鏡が必要な場合の病名(疑いも含む)の記載が妥当です。
2) 内視鏡検査で胃炎の確定診断のもと感染検査を行う場合の病名は『ヘリコバクター感染胃炎』ないしは『ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎の疑い』となります。
3) 除菌治療を行う場合は『ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎』となります。
Q.他の施設において内視鏡(検診・健診を含めて)で胃炎と診断された患者さんに対して感染検査や除菌治療ができるのですか?
A.他施設で、6か月以内に通常診療および健康診断として内視鏡検査が行われ、胃炎と確定診断がなされていた場合には、内視鏡検査を省略して感染検査を行うことができます。その際には、診療録および診療報酬明細書の摘要欄に内視鏡の施行日および胃炎所見を記載しておくべきです。(注意: 6か月以内という期間は学会の見解であります)
Q.健康診断で内視鏡検査をおこなって胃炎の疑いがあった場合は、病院でもう一度内視鏡検査をする必要がありますか?
A.健康診断にて胃炎の診断が確定していれば、診療報酬明細書の摘要欄に"健康診断の内視鏡検査で胃炎(検査施行日も)"と記載すれば、もう一度内視鏡検査をしなくても公的保険でピロリ菌感染診断および感染陽性であれば除菌治療を受けることができます。
Q.2次除菌する際も内視鏡検査による再度の確認が必要ですか?
A.内視鏡検査にて胃炎の診断があれば、一次除菌および二次除菌ともに受けられます。但し一次除菌不成功後、6か月以上空いていたら、胃癌のスクリーニングのために内視鏡検査の施行をお勧めします。(6か月は日本消化器病学会の考えです)
Q.内視鏡検査でなくX線検査で胃炎、胃潰瘍の診断をされる先生がいます。 胃炎の確定診断はX線検査で可能ですか?
A.今回のピロリ菌検査・治療の保険適用追加では"内視鏡検査によって胃炎の確定診断がなされた患者"が対象となります。残念ながら、胃潰瘍とは異なりX線検査のみで胃炎と診断することはできません。
Q.胃炎の確定診断時は内視鏡検査が必須で、胃潰瘍の時は内視鏡検査は必須でないと理解してよいか?
A.その通りです。今回の保険適用追加の際にヘリコバクター・ピロリ感染胃炎の診断は「内視鏡検査にて胃炎と診断した患者」となっていますが、消化性潰瘍については、以前と同様で、「内視鏡検査又は造影検査において胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の確定診断がなされた患者」となっています。
Q.胃癌で無い事を内視鏡検査で確認とありますが、医師により内視鏡技量に差があり胃癌を見落として、除菌治療という事にならないかと懸念しています。
A.内視鏡検査でも胃癌の見落としはありうるのですが、日本消化器病学会、日本消化器内視鏡学会、日本消化器外科学会、日本消化管学会などに代表される消化器関連学会では、専門医制度を作り、医師の内視鏡診断・治療のレベルが向上する努力を重ねています。見逃しの可能性を考慮して、除菌成功1年後の内視鏡検査が重要です。胃癌の早期発見を考慮すると、さらなる定期的な内視鏡検査も必要です。
Q.内視鏡検査が必須である理由を教えてください。
A.ピロリ菌に感染している場合には、必ず慢性活動性胃炎を起こしており、胃癌をはじめとするピロリ関連疾患が併存している可能性があります。日本ではとくに胃癌が多いので、胃癌のチェックをしたのちに除菌治療を行うべきであるとの意見から内視鏡検査が必須となりました。
Q.「胃炎」の種類については限定されるのですか。種類まで記載しなくてはならないのか?
A.今回の保険適用追加に関しては、「内視鏡検査にて胃炎が診断された患者」であり、特に胃炎の種類は問われていません。代表的な病名としては「萎縮性胃炎」がありますが、明らかにピロリ菌以外の原因である"薬剤性胃炎"、"ストレス性胃炎"などは対象になりません。また、診療報酬明細書の摘要欄に内視鏡検査の検査日と胃炎の所見の記載が必要ですが、厚生労働省保険局医療課の通知によってヘリコバクター・ピロリ感染胃炎の診断名であれば、胃炎の所見の記載は不要となりました。
Q.ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎が適応追加になりましたが、ピロリ菌感染を確認するための内視鏡検査は保険適用にならないのではないのか?
A.ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎に関する内視鏡検査は「胃炎の存在を確認するための検査」であり、内視鏡でピロリ菌感染を確認するものではありません。ただし、健康診断等でピロリ菌抗体陽性が指摘されて、「胃癌の疑い」で内視鏡検査を受けることがあります。その際には、感染診断の実施施設および施行日と結果を診療録および診療報酬明細書の摘要欄に記載しておけば、内視鏡検査はもちろん保険適用となります。
Q.今回、ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎に対する除菌治療が追加適用になりましたが、効能効果に関連する使用上の注意に「内視鏡検査によりヘリコバクター・ピロリ感染性胃炎であることを確認すること」とありますが、「胃潰瘍または十二指腸潰瘍における除菌療法」では内視鏡は必須になるのですか?
A.胃潰瘍または十二指腸潰瘍に対するピロリ菌感染診断の保険適用は、内視鏡検査又は造影検査において胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の確定診断がなされた患者となっています。必ずしも内視鏡検査は必要ではありませんが、胃潰瘍または十二指腸潰瘍の場合も内視鏡検査は必要と考えます。それはその潰瘍性病変が癌性潰瘍であることを否定すること、または他に癌病変が併発していることを否定するためです。ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎であること自体が胃癌の発生リスクであることを強く認識することが必要です。
Q.厚労省の通達通りに、全ての症例で内視鏡検査等を実施したことを診療報酬明細書に記載しなくてはならないのか?
A.全ての症例で内視鏡検査の実施日を診療報酬明細書の摘要欄に記載する必要があります。当初は内視鏡検査等で確定診断した際の所見・結果を診療報酬明細書の摘要欄に記載することになっていました。H25年6月14日の厚生労働省保険局医療課通知では「傷病名」欄から胃炎と判断できる場合には、胃炎と確定診断した内視鏡検査の実施日を記載することでもよいことになり、「ヘリコバクターピロリ胃炎」の診断があれば、胃炎の所見の記載は不要となります。
Q.今回のヘリコバクターピロリ感染感染胃炎の効能追加に関して、内視鏡がない施設では除菌ができないか?
A.内視鏡検査は必須ですが他の施設で内視鏡を行った場合は除菌は可能となります。その際実施した日付と施設を記載することが望ましいです。内視鏡検査のみを依頼するなどの工夫が必要です。
Q.ヘリコバクターピロリ感染胃炎を確認する場合に内視鏡検査をするときの病名はどうしたらよいですか?
A.内視鏡検査については従来と同様で、患者さんの症状等によって内視鏡が必要な場合の病名(胃がんの疑いなど)の記載が妥当です。H.pylori感染慢性胃炎を確認する内視鏡の場合は、「ヘリコバクターピロリ感染胃炎の疑い」が望ましいと考えます。
Q.内視鏡検査をどうしても嫌がる患者には、内視鏡検査をせずにピロリ菌の感染診断を行った場合には、診断検査代は保険適用になりますか?
A.内視鏡検査を施行しない場合、現時点では残念ながら、ピロリ菌の感染診断を保険診療で行うことができません。健診などですでに内視鏡検査を受けている場合は、その日付と結果を記載すれば感染診断が可能と考えます。
Q.萎縮性胃炎を認めなくても除菌治療ができますか?
A.内視鏡的に萎縮性胃炎の所見がなくともピロリ菌感染が陽性の場合は胃粘膜の炎症を伴っていることがほとんどです。特に若年者では萎縮の乏しい慢性胃炎のことが多いです。将来的には萎縮性胃炎に発展し、胃癌の発生母地になりますので、除菌治療の適応です。
Q.胃潰瘍、胃炎がないにも関わらずピロリ菌陽性の場合の除菌治療はどうすればよいのか?
A.ピロリ菌陽性の場合は炎症細胞浸潤を有する慢性胃炎となっています。内視鏡的に潰瘍がなく、また一見胃炎がないように見えても、本当に内視鏡的にピロリ菌未感染の正常胃か否かを確認してください。正常胃の場合には、RAC(regular arrangement of collecting venules)などのピロリ菌未感染の典型的な所見が認められるはずです。このような所見がない場合でも、ピロリ菌陽性であれば慢性胃炎が生じていると考え、除菌治療の適応となります。
Q.ヘリコバクターピロリ感染胃炎を疑う内視鏡所見を教えてください。
A.萎縮粘膜を意味する血管透見像が胃体部に存在すること、ピロリ未感染正常胃に観察されるRACが体下部や胃角部で観察されないことがヘリコバクターピロリ感染胃炎を考える所見です。除菌治療でピロリ菌感染が現在ない既感染胃と現在も活動性のピロリ菌感染胃炎であるかの鑑別は、白いべったりとした粘液付着、体部大弯の襞の腫大、萎縮粘膜に比較して非萎縮粘膜の発赤が強い、などでピロリ菌感染胃炎の診断を行います。

HP診断

Q.胃癌リスク検診等でピロリ感染陽性と判明していた場合、再度ピロリ感染診断の必要はあるのでしょうか?
A.検診等でピロリ感染陽性と判明していた場合には、内視鏡検査による胃炎の確定診断は必要ですが、再度ピロリ感染診断を行う必要はありません。その際には、診療録および診療報酬明細書の摘要欄に感染診断の実施施設および施行日と結果を添付ないしは記載しておくべきです。
Q.追加効能取得前に自費で除菌治療をされた患者に対して、除菌判定や二次除菌は保険適用とすることができるのでしょうか?
A.診断時の内視鏡検査の所見および除菌治療施行日等を診療録および診療報酬明細書の摘要欄に記載した上で、除菌判定や2次除菌を行うことは保険診療の適用となります。これらの証拠が不明確の場合には再度の内視鏡検査が必要です。
Q.内視鏡検査とピロリ菌感染診断検査の期間が空いたことで何か影響があるのですか?
A.保険診療では、内視鏡検査によりヘリコバクターピロリ感染胃炎が疑われた際、ピロリ菌感染を診断することになっています。日本消化器病学会としての見解では、内視鏡検査とピロリ菌感染の確認の間は6か月以内とされています。それ以上期間が空いている場合は,再度内視鏡検査を行い、胃癌のスクリーニングとピロリ菌感染診断を行うべきです。ピロリ菌が胃癌の原因菌であることを考慮すると,内視鏡的にピロリ菌感染が疑われた場合、感染診断までに年余にわたる空白が出来ることは望ましくありません。
Q.ヘリコバクター感染胃炎の感染診断法には、迅速ウレアーゼ試験、 鏡検法、培養法、抗体測定、 尿素呼気試験、便中抗原測定があるが、学会として推奨している検査法を教えて欲しい。
A.ピロリ菌感染診断法には6つの方法が保険適用となっていますが、総合的に尿素呼気試験が最も信頼度が高いといわれています。また、便中抗原測定もこれと同等の信頼性の高い検査法です。これらは、面の診断法で、除菌判定にも有用です。面の診断法である抗体測定には、日本人の菌株から作られたキットが使用されるようになり、感度,特異度も高くなっています。ただし、小児や感染直後には陽性化しないことがあり、除菌成功後もすぐには陰性化せず陽性状態が長期間続きます。一方,内視鏡検査のときに同時に行える迅速ウレアーゼ試験、鏡検法、培養法は点の診断法といわれており、ピロリ菌が胃粘膜に一様に生息している訳ではないので、ピロリ菌陽性者でも、菌のいない部分から組織を採取すると偽陰性となることがあるので注意が必要です。以上のような長所、短所を理解した上で感染診断を行うことになりますが、プロトンポンプ阻害薬(PPI)を服用している場合は偽陰性を防ぐために2週間の休薬後に行うことになっています。とにかく、ピロリ菌陽性、陰性を示す特徴的な内視鏡所見を十分に理解しておくことが何よりも重要です。
Q.去年はピロリ菌陰性であったのに、今年は陽性といわれたので除菌したいという患者がいますが、そういうことが起こり得るのですか?
A.そのようなことはあり得ます。原因として①頻度は低いですが、一年以内にピロリ菌に感染した場合、元来よりピロリ菌感染があったが、前年の診断時に②PPIや一部の防御因子製剤を服用していたために偽陰性となった場合、③点の診断法である迅速ウレアーゼ試験、鏡検法、培養法によるサンプリングエラーの場合、等が考えられます。
Q.除菌判定のためには、PPIを4週以上休薬しなければならないのですか?
A.日本ヘリコバクター学会ガイドライン2009によると、除菌判定は除菌治療薬中止後4週以降に行うことになっています。しかし、偽陰性例を少なくするため、除菌治療終了3か月以降に行うことが望ましいとの報告もあり参考にすべきと思います。除菌判定前にPPIが使用されていると、30-40%に偽陰性になることが知られています。そこで、除菌判定前には一定期間のPPI休薬が必要です。保険適用上は、当初はPPIを4週間以上休薬が必要とされていましたが、現在では2週間の休薬が求められています。
Q.内視鏡検査で確定診断した際の所見・結果とは、具体的にどのように記載すればよいのですか。 診断日なども必要ですか?
A.ピロリ菌感染診断や除菌治療の適用追加がされたのは『内視鏡検査において胃炎の確定診断がなされた患者』です。つまりヘリコバクター・ピロリ感染胃炎という病名のもとに感染診断や除菌療法を行えます。診断日も記載されていることが必要です。 2013年7月よりヘリコバクター・ピロリ感染胃炎という病名が記載されている場合には、胃炎の所見については記載が不要となりました。
Q.ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎の診断ですが、内視鏡と除菌診断を同日に行っても保険上は大丈夫ですか?
A.先に内視鏡検査によって胃炎の確定診断がなされれば、同日に感染診断を行うことができます。例えば、内視鏡検査で胃炎と確定診断の後に、生検を施行して迅速ウレアーゼ試験などを行うことができます。また、内視鏡終了後に尿素呼気試験などを行うこともできます。
Q.除菌治療前の感染診断検査で陰性だった場合、ピロリ菌感染診断検査の費用を保険請求できますか?
A.内視鏡施行後であればヘリコバクター・ピロリ感染胃炎の疑いとして請求できます。感染診断検査には、迅速ウレアーゼ試験, 鏡検法, 培養法, 抗体測定, 尿素呼気試験, 糞便中抗原測定がありますが、いずれも感度や特異度が100%というわけではありません。すなわち、ピロリ菌がいるのに、検査結果では陰性と判定されることがあります。そのため、検査結果が陰性であった場合は、最初とは異なる検査法での再検査も1項目に限り請求が可能です。
Q.ABC分類のD判定でピロリ陰性と出ている場合でも除菌してもいいのですか?
A.ABC分類のD群は、ペプシノーゲン法が陽性かつピロリ菌の血清抗体法が陰性である群です。通常は胃粘膜の萎縮が強く、ピロリ菌が生存できない状態が多く、D判定は胃癌のリスクが最も高い群であり、注意深い観察を要します。血清抗体法で陰性であっても、同検査の感度は91-100%であり、抗体産生能の低下などが要因で偽陰性になっている可能性もあります。保険診療では、血清抗体法、尿素呼気試験、便中抗原、の非侵襲的検査については除菌前後のいずれにおいても2つの検査の同時算定が可能です。したがって、D群に関しては血清抗体法のみでなく他の感染検査法を追加し、陽性が確認された場合には除菌を行なうのが良いと思われます。
Q.以前から、胃炎の病名で薬剤を投与されている患者に、ピロリ菌の診断検査をしたら、保険の適用となるのですか?
A.胃炎の病名だけではピロリ菌の感染診断はできません。ピロリ菌感染診断の保険適用上の対象は『内視鏡検査にて胃炎の診断がなされた患者』となっています。この「内視鏡検査」とは、胃炎の確定診断だけでなく、器質的疾患、とくに胃癌の有無を評価する目的もあり、現時点で胃癌を認めないというためには、6か月以内に内視鏡検査が実施されている必要があります(日本消化器病学会の見解)。なお、他施設で行われた場合でも、胃炎の確定診断がついていれば内視鏡検査を省略することはできますが、その際には、診療録および診療報酬明細書の摘要欄に内視鏡の施行日を記載しておく必要があります。
Q.いきなり内視鏡検査を実施するのは患者に負担がかかるので、尿素呼気試験等を最初に実施してスクリーニングしたい。その際、尿素呼気試験を実施したがピロリ菌陰性だった場合に、診療報酬明細書にどのように記載すればいいのですか?
A.厚生労働省保険局より「ヘリコバクター・ピロリ感染の診断及び治療に関する取扱いについて」の通達には以下のように記載されています。ヘリコバクター・ピロリ感染症に係る検査については、以下に掲げる患者のうち、ヘリコバクター・ピロリ感染が疑われる患者に限り算定できる。① 内視鏡検査又は造影検査において胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の確定診断がなされた患者② 胃MALTリンパ腫の患者③ 特発性血小板減少性紫斑病の患者④ 早期胃癌に対する内視鏡的治療後の患者⑤ 内視鏡検査において胃炎の確定診断がなされた患者です。従って、内視鏡検査を行っていない患者に対して尿素呼気試験等を最初に実施してスクリーニングをすることはできません。

病理

Q.胃炎の診断は内視鏡検査による診断で良いのですか?あるいは生検組織によるシドニー分類による病理学的な診断が必要ですか?
A.日常診療におけるヘリコバクター・ピロリ感染胃炎の評価は内視鏡診断で十分であり、組織学的な慢性胃炎の診断は求められていません。組織学的胃炎の客観的評価には、アップデートシドニー分類(Updated Sydney System)にもとづいた病理所見の評価が推奨されます。胃炎の世界統一基準であるシドニー分類(The Sydney System)は,1990年にシドニーで開催された世界消化器病学会で提唱され、内視鏡部門と病理組織部門から構成されています。病理組織部門につきましては、1996年に改訂分類としてアップデートシドニー分類が報告されています。アップデートシドニー分類における胃炎の組織学的評価は、胃体部、前庭部の小・大彎、そして胃角部小彎の計5点生検をおこない、それぞれの生検組織について炎症(単核細胞浸潤)、活動性(好中球浸潤)、萎縮、腸上皮化生、H.pyloriの5項目の定量化によりおこなわれます。
Q.内視鏡検査では生検組織を採取する必要はあるのですか?
A.慢性胃炎の診断には①内視鏡検査所見に基づいてなされる診断(内視鏡的慢性胃炎)と、胃粘膜生検組織の病理組織所見に基づいてなされる診断(組織学的慢性胃炎)があります。後者がより厳密な慢性胃炎の診断と考えられますが、日常診療における「内視鏡検査による慢性胃炎の診断の確定には、胃生検による組織学的慢性胃炎の診断は必要とされていません。

適応

Q.除菌適応に年齢制限を行なう必要性があるのでしょうか?
A.原則的に高齢などの年齢制限はありません。ただし、薬事法で定められている除菌治療の効能効果欄に『通常、成人には、、』とされており、未成年者に対する除菌治療は明記されていませんので、未成年者に対する診療に際しては患者さんの同意が必要と思われます。
Q.内視鏡検査を行い、ピロリ菌感染の検査を行えば全て除菌治療が可能ですか?
A.はい、可能です。除菌治療を開始する前には上部消化管内視鏡検査を行うことが必須となっています。まずは内視鏡検査による胃炎の診断(内視鏡所見)と、胃癌の除外が必要です。その後、ピロリ菌感染の検査を行い、陽性であれば除菌治療を行うことが可能です。
Q.急性胃炎の場合は除菌治療は適応外ですか?
A.AGMLなどピロリ感染による急性胃炎もあり、感染診断で陽性なら可能です。しかし、急性胃炎の原因がピロリ菌感染であることはむしろ少なく、他の原因が主体です。今回、保険適用拡大となったヘリコバクター・ピロリ感染胃炎は、急性炎症と慢性炎症が混在した慢性活動性胃炎と呼ばれる慢性胃炎状態です。ピロリ菌による急性胃炎は通常、一過性の感染であることが多いですが、持続感染が確認された場合には通常通り、ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎として除菌治療が可能となります。
Q.若年者では萎縮性胃炎まで進展している症例は少ないが、表層性胃炎の場合でも除菌は可能ですか?
A.はい、可能です。ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎は、急性炎症と慢性炎症が混在した慢性活動性胃炎と呼ばれる慢性胃炎状態です。若年者のピロリ菌感染胃炎の典型として鳥肌胃炎があります。これはリンパ球やリンパ濾胞による慢性炎症が主体となり、萎縮をほとんど認めませんが、除菌治療の良い適応疾患となります。
Q.胃癌撲滅が目的であるならば、内視鏡検査を必須とせず、もっと手軽に若年者でも除菌できるようにすべきではないですか?
A.はい、その通りです。現在、除菌治療を開始する前には上部消化管内視鏡検査を行い、ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎の診断と、胃癌の除外が必要となっています。若年者では胃癌の発生頻度は低いため、今後は「test&treat」、すなわち保険診療でまずピロリ菌感染の検査をして、その後除菌治療を行うのが理想です。現在、公費を使用したこのような試みが市町村レベルで行われつつあります。
Q.胃潰瘍の診断名で除菌治療に失敗し、その後、胃炎の病名で除菌治療した場合、保険上、初回の除菌治療と見なされますか?
A.たとえ別病名での除菌治療でも、同じ薬剤による再治療は一連の治療として扱われます。診療報酬上では「除菌後の感染診断の結果、ヘリコバクター・ピロリ陽性の患者に対し再度除菌を実施した場合は、1回に限り再除菌に係る費用及び再除菌後の感染診断に係る費用を算定することができる」すなわち、保険上は二次除菌治療と見做されます。なお、時期が空いて二次除菌治療をおこなう際には、診療報酬明細書の摘要欄に一次除菌失敗を日時とともに記載する方が良いでしょう。
Q.ピロリ菌の除菌治療ですが、他院へ内視鏡検査を依頼した場合などでもピロリ菌の感染診断で陽性がでれば使えますか?
A.他院の内視鏡検査であっても、慢性胃炎の所見があることを確認でき、ピロリ菌感染診断で陽性であれば除菌治療は可能です。診療報酬明細書の摘要欄に検査施行日と所見を記載しておくことが必要です。ただし、内視鏡検査は感染診断に先行し、かつ6ヶ月以内に施行していることが必要です。(「6か月以内」は日本消化器病学会としての見解です。)
Q.他の施設で、内視鏡を実施し胃炎と言われたと言って患者さんから除菌を希望された場合(内視鏡を実施されたという証明が無い場合)は除菌だけを当院で実施することは可能ですか?
A.内視鏡検査にて胃炎の確定診断がされたことを確認する必要があります。その上で、感染診断でピロリ菌陽性が確認されれば除菌治療の適応です。除菌治療を実施する場合は、診療報酬明細書の摘要欄に内視鏡施行日および所見を記載する必要があります。不明な場合には再度の内視鏡検査が必要です。
Q.診断名は「ヘリコバクターピロリ感染胃炎」と「慢性胃炎+ヘリコバクター感染症」どちらでもよいですか?
A.正しい保険適応疾患名である「ヘリコバクターピロリ感染胃炎」を使用すべきです。なお、胃潰瘍、十二指腸潰瘍で除菌治療を行う場合などは、「ヘリコバクターピロリ感染症」の記載が別途必要です。
Q.「慢性胃炎」の効能では、医学管理料225点を取っていたが、今後、慢性胃炎の患者さんに除菌治療をする際、病名を「ヘリコバクターピロリ感染胃炎」に変更しなければならないと思いますが、この点について保険上どのように対応すればよいでしょうか?
A.診療期間が1ヶ月以上の場合、病床数200未満の医療機関においては、病床数に応じて慢性疾患療養管理料が算定可能です。対象疾患には「胃炎および十二指腸炎」が指定されています。したがって、慢性疾患療養管理料を継続する場合には「慢性胃炎」および「ヘリコバクターピロリ感染胃炎」のうち後者は治癒となりますが、症状などによる「慢性胃炎」に対する治療が必要であれば、保険上は「慢性胃炎」に対する治療の継続と管理料の対象となります。

治療

Q.1次除菌、2次除菌の順番は変更できるのでしょうか?また、クラリスロマイシン耐性菌であることが判明している場合にはどうするのでしょうか?
A.保険診療では1次除菌と2次除菌の順番の変更はできません。ただし、クラリスロマイシン耐性菌であることが判明している場合は、医療費削減の面からも診療録および診療報酬明細書の摘要欄にクラリスロマイシン耐性である証拠(感受性検査の実施施設および施行日と結果)を記載して2次除菌を使用すべきです。
Q.1次除菌に失敗後に長い期間が空いても2次除菌を実施できるのでしょうか?また、以前に他施設で除菌治療を受けたとの自己申告がある場合に、2次除菌を行ってよいのでしょうか?
A.1次除菌に失敗した場合のクラリスロマイシンの耐性率は高いので、1次除菌を再び施行しても成功率は低くなります。従って、1次除菌の既往がある場合には、内視鏡検査によって胃炎の確定診断とピロリ感染陽性が判明すれば2次除菌は可能です。その際に、1次除菌失敗である事項を診療録および診療報酬明細書の摘要欄に記載しておくべきです。
Q.小児は何歳から除菌可能ですか?
A.小児期ヘリコバクター・ピロリ感染症の診断,治療,および管理指針(加藤ら.日本小児科学会雑誌109:1297-1300,2005)では、除菌後の再感染のリスクを考慮して除菌対象年齢を5歳以上としています。しかし、蛋白漏出性胃症や消化性潰瘍を反復するなど除菌治療が必要と判断された場合では5歳未満でも除菌治療が行われています。ただし、除菌治療に関する添付文書では「小児等への投与:小児等に対する安全性は確立されていない(使用経験が少ない)」となっており、治療が必要な場合には保護者に充分な説明を行う必要があります。
Q.3次除菌の抗生物質は、どんな種類の抗生剤を用いるのが良いのですか?
A.本邦の多施設無作為割付試験の3次除菌の論文が発表されています(Murakami K, et al.Multi-center randomized controlled study to establish the standard third-lineregimen for Helicobacter pylori eradication in Japan.J Gastroenterol 2013; 48:1128-35.)。PPI2倍量+アモキシシリン1500mg+シタフロキサシン200mgの1週間投与が最も高い除菌率でしたが、ITTで70.0%と十分ではありませんでした。現在さらなる試験が進行しています。ただし、3次除菌は保険診療では適応外となっています。
Q.クラリスロマイシンの耐性化が問題です。2次除菌のレジメから始めたいのですが可能ですか?
A.メトロニダゾールを用いる2次除菌のレジメは、公知申請の手続きにより保険適用が認可されました。このため、同治療を1次除菌に用いることは出来ません。ただし、クラリスロマイシン耐性が判明している場合には、2次除菌から開始することができます。その際には、診療録および診療報酬明細書の摘要欄にクラリスロマイシン耐性である証拠(感受性検査の実施施設および施行日と結果)を記載します。
Q.1次除菌実施後、除菌失敗したと判明後、どのくらいの期間があくと2次除菌を実施できなくなるのですか?例えば10年前に除菌を行った患者様が来院され、除菌したことがあると自己申告しか情報がない場合でも、2次除菌のレジメを使ってよいですか?正確な実施状況が明確で無い場合は、1次除菌から始めなくてはならないのですか?
A.1次除菌実施後、除菌失敗したと判明したことがはっきりしていれば、クラリスロマイシン耐性の可能性が高く、何年たっていても2次除菌を施行するのがよいです。保険手続き上、除菌治療がなされ除菌不成功であったことの記載が必要です。除菌治療の実施状況が明確でない場合には、1次除菌から始めるのがよいです。
Q.高度の萎縮性胃炎で、ピロリ菌の菌量が少量と考えられる場合も除菌した方がよいですか?
A.呼気試験、便中抗原などが陽性であれば、胃粘膜にはある程度のピロリ菌が感染していると考えて除菌治療するべきです。ただし、抗体法のみが陽性の場合、とくに抗体価がカットオフに近い場合は菌量が僅かか、すでに感染が消失していることもあるので、除菌治療を行わず抗体価を経過観察することも考えます。
Q.除菌としてではなく逆流性食道炎で長期間PPIを飲んでいる患者さんが、肺炎でクラリスロマイシンとアモキシシリンをのんだ場合、除菌されますか?
A.過去の論文ではPPIとクラリスロマイシンだけでも10%程度の感染者で除菌されることが報告されています。逆流性食道炎で使われるPPIの量は除菌治療には十分とは言えませんが、質問のようなケースで7日を超えてPPIと抗菌薬が使用されれば除菌されることがあると考えられます。しかし、耐性菌となっている場合には除菌成功率が低いと思われます。
Q.除菌治療を行う場合、胃潰瘍・十二指腸潰瘍での使用とヘリコバクター・ピロリ感染胃炎での使用で除菌薬に違いがありますか?
A.消化性潰瘍の患者であってもヘリコバクター・ピロリ感染胃炎の患者であっても除菌治療に使用する薬剤の種類・量・投与方法・期間に違いはありません。
Q.過去に除菌治療が成功していて、数年後、再度ピロリ菌が見つかった場合、また一次除菌からしなければならないのですか?
A.除菌治療が不成功であった場合、胃内環境によっては感染検査の再陽性化に数か月以上かかることもあります。最後の陰性検査が除菌治療終了から1年以内であれば、残っていたピロリ菌が増えた可能性が高いです。除菌終了から1年以上たった検査で陰性であったものが数年後に陽性になった場合は再感染を考えます。ただし再感染は稀ですので、基本的に除菌不成功者として2次除菌を行うのがよいと考えます。
Q.一次除菌と二次除菌の間の期間について教えてください。
A.一次除菌と二次除菌の期間の違いによる除菌成功率の違いは報告されていません。早く二次除菌を行おうとして一次除菌の結果判定を急ぐと、偽陰性や偽要請陽性が多くなり、不成功者を成功者と、成功者を不成功者などと判断してしまいます。確実な除菌判定を心がけましょう。
Q.除菌治療の適応年齢について、高齢者(たとえば80歳代)は除菌治療を行なう必要性があるのですか?
A.年齢のみで適応の有無を判断することはできません。MALTリンパ腫であれば年齢に関わらず感染者は除菌治療するべきです。胃癌予防の観点からであれば、80歳以上で腸上皮化生も伴う高度な胃粘膜萎縮がある場合は予防効果が少なく、さらに腎機能が悪い場合などは積極的に除菌を行う必要はないでしょう。基礎疾患がなく、本人の希望がある場合には高齢であっても除菌治療を行ってよいでしょう。また、お孫さんなどと接することが多い高齢者では感染源となりうるので、除菌治療を考慮した方がよいでしょう。

除菌後

Q.ピロリ感染胃炎の除菌成功後に注意しなければならないことを教えてください。
A.除菌成功後にも胃癌が発見されることがあるので、除菌に成功した後も定期的な胃癌のスクリーニング検査は必要となります。また、萎縮の強い症例や食道裂孔ヘルニアを合併している症例では除菌後に胃食道逆流症(GERD)が出現することがあります。
Q.除菌治療後、PPI又はH2受容体拮抗薬を続ける必要がありますか?
A.消化性潰瘍を除菌する場合には、除菌後も潰瘍治癒目的でPPI又はH2受容体拮抗薬を一定期間継続する必要があります。しかしながら、ピロリ感染胃炎を除菌した際には基本的にはその必要はありません。
Q.除菌治療による慢性胃炎の内視鏡的な改善効果はどの程度の期間で判断しますか?
A.内視鏡的にピロリ菌の現感染を疑う所見とは、胃体部~穹窿部の点状・びまん性発赤、ひだの腫大・蛇行、RACの消失、粘調な粘液、結節性変化などです。除菌治療によるこれら内視鏡所見の改善効果の確認は、まずは除菌1年後に内視鏡検査を行うことをお勧めします。その後も除菌施行医は内視鏡によるfollow upを責任を持って継続することをお勧めします。
Q.除菌治療終了後、再感染に気をつけるために観察期間は何年ほどとった方がよいのでしょうか?
A.本邦の成人においては、除菌治療成功後の再感染率は年間1%未満と報告されています。除菌成功後の再感染は極めて稀で、再感染が起こる場合でも除菌後1年以上経過したからです。除菌成功が正しく診断できれば、特別な除菌判定のための観察期間の設定は不要です。なお、胃癌の早期発見のためには除菌成功1年後の内視鏡検査が推奨されています。
Q.除菌成功患者が安易に胃癌にならないと思い込み、健診受診の件数が減る可能性もある。学会として何かしらの啓蒙は考えているのですか?
A.除菌成功後にも定期的な内視鏡検査や胃がん検診を継続して実施することは極めて重要です。このことは、除菌施行医が必ず患者に説明すべき事項です。学会でも、消化器内科専門医のみならず、除菌治療を行う一般内科医に正しい知識を啓蒙するよう活動をしています。また一般市民にも、新聞報道や市民公開講座を通じて、正しい知識の普及に努めています。

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