このコーナーでは、消化器の病気や健康に関する疑問や悩みについて、専門医がわかりやすくお答えします。
Q. 肝嚢胞は治療しないといけませんか?
肝嚢胞は肝臓の中に液体がたまったふくろができる病気です。最近は健診や病院の画像検査(超音波検査、CT、MRI)でたまたま発見されることが多くなりました。基本的には先天的な嚢胞で、成人では2~5%の方に認められ、無症状で良性のことがほとんどですから、症状がなければそのまま様子をみていただいて構いません。
しかし、まれに経過とともに大きくなって、腹部膨満感や腹痛、食欲低下などを来すことがあり、その場合は治療の対象となります。治療方法の1つ目に超音波を用いて、局所麻酔で嚢胞に針を刺して嚢胞内の液体を排出する方法があります。排出するだけではまた嚢胞に液体が溜まり始めて元に戻ってしまうことがあるため、場合によっては、エタノールやミノサイクリンなどの薬液を注入する処置を追加します。2つ目に手術による嚢胞の切除あるいは嚢胞壁の一部を切除して大きく穴を開け、たまっている液体を排出させる方法があります。もし、嚢胞が多発していてこれらの治療が困難なとき、場合によっては肝移植を行うこともあります。
どのタイミングでどのような治療が必要になってくるかに関しては、肝嚢胞の状態や個数や大きさ、全身状態なども考慮する必要がありますので、担当の医師とよく相談して進めていくことが重要です。肝嚢胞の経過観察中にもまれに、嚢胞が破裂したり感染したりすることもあり、その場合には激しい痛みや発熱などの症状を認め、抗生剤治療が必要となります。
また、常染色体優性多発性嚢胞腎という遺伝性の腎臓の病気の方の約半数に多発肝嚢胞を認めることがあります。親が過去に多発腎嚢胞と診断されたり、ご自身に多発肝嚢胞の指摘があった際は、腎臓の検査も行ったほうがいい場合もありますので、こちらに関しても担当の医師とよく相談してください。