一般のみなさまへ

健康情報誌「消化器のひろば」No.26-8

消化器どうしました?Q&Aこのコーナーでは、消化器の病気や健康に関する疑問や悩みについて、専門医がわかりやすくお答えします。

Q. 家族が大腸がんにかかりました。遺伝が心配です。

家族にがんが見つかると、「自分も同じがんになるのでは?」と不安になるかもしれません。大腸がんは頻度の高いがんですが、ほとんどの場合は遺伝とは関係なく、生活習慣や環境が原因です。ただし一部の大腸がん(約5%)は、親から子に特定の遺伝子の変化が受け継がれることが原因で発症します。これを「遺伝性大腸がん」と呼びます。代表的な疾患に「家族性大腸腺腫症」と「リンチ症候群」があります。

若くして大腸がんになった人がいたり、複数回大腸がんを発症したり、大腸ポリープが多数見つかったり、家族にがん患者が多かったりする場合には、「遺伝性大腸がん」が疑われます。また、顕微鏡検査や抗がん剤に関連する検査で「遺伝性大腸がん」の可能性を指摘されることもあります。最終的には、血液を用いた遺伝子の検査によって診断を確定するのが一般的です。ただし、その検査結果は家族にも影響を与え、心理的な負担を感じることもあるため、遺伝子の検査を受ける前に「遺伝カウンセリング」を受けるよう推奨されています()。

「遺伝性大腸がん」に対しては、一般の大腸がんとは異なる検診や治療が勧められています。たとえば、若いうちから定期的に内視鏡検査を行うことでがんを早期に発見したり、ポリープを切除することでがんのリスクを下げたりすることが可能となります。このため「遺伝性大腸がん」が疑われる場合は、専門家に相談し、きちんと診断を受けることがとても大切です。


 

<回答者>

岩国医療センター 院長
田中屋 宏爾

田中屋 宏爾
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