FOCUS 臨床研究 ―より良い医療を目指して―
新薬や新医療機器の「治験」など医療の発展を支える様々な研究
近年の医療の進歩は目覚しく、新しい薬や医療機器、新しい医療技術が次々と開発されています。これらの新しい医療の開発は、多くの「臨床研究」によって得られた科学的証拠(エビデンス)に基づいて展開されています。「臨床研究」とは、患者さんや健康な方に研究に参加していただいて、病気の原因解明、診断・治療・予防方法の改善や開発、現在行われている医療の再検討などを目的に行われています。
「臨床研究」の手法は様々で、過去の診療記録(カルテ)から患者さんの病気の状態や検査データを抽出して実施されたありのままの医療の解析を行う研究や、通常の診療とは別に採血や画像検査を追加させていただく研究、さらに試験的な医療に参加していただく研究など、いろいろなレベルのものがあります。通常は、ありのままの医療の解析を行う研究の結果を基に、試験的な医療に参加していただく研究が立案されてきます。
「臨床研究」の中で、試験的な医療に参加していただく研究を「臨床試験」と呼びます。その中でも、新薬や新医療機器などを用いた「臨床試験」で、これから厚生労働省の承認を受けることを目的としたものを「治験」といいます。現在いろいろな病気で処方されているお薬や治療に使われている医療機器は、ほとんどすべてが「治験」を行い、その試験の結果有効性と安全性が証明され厚生労働省で承認されたものです。
また、「先進医療」も「臨床試験」として実施されています。「先進医療」は、未承認の医薬品や医療機器を用いた医療ですが、過去に実施された多くの「臨床研究」による根拠に基づいて厚生労働省が安全で有効性が見込めると特別に認めた医療で、保険適用を目指して行われています。「臨床試験」は、患者さんにとって新しい医療を受けるという一面はありますが、その医療が本当に最善の医療であるのかを確認させていただいている側面があります。そのため、患者さんの安全確保と倫理的配慮は確実に担保されなければなりません。
「臨床試験」に限らずすべての「臨床研究」において、研究に従事する医師などは、研究に参加いただいた患者さんたちの個人情報の保護はもちろんなのですが、サンプルやデータを無駄にしない責任があります。同時に、実施される研究には倫理的に問題がないこと、社会的に意義があること、科学的に妥当であることが求められ、「臨床研究」に関する倫理指針や法を遵守して行われています。
日本中の多くの医療機関で、様々な「臨床研究」が実施され、学会などで多くの「臨床研究」の結果が持ち寄られ、議論され、論文にまとめられ世界中に発信されています。そして、このことが、より良い医療の提供、新しい医療の発展に貢献しています。患者さんに最善の医療を提供するには、「臨床研究」は欠かせない医療者の責務の一つなのです。