このコーナーでは、消化器の病気や健康に関する疑問や悩みについて、 専門医がわかりやすくお答えします。
Q. 十二指腸腫瘍と言われましたが、どうしたらいいでしょうか?
十二指腸は胃の次に食物が通る消化管で、膵臓の頭部を抱え込むようにC 字形に走行しています(図)。長さは約25㎝で途中に膵液と胆汁を分泌する乳頭があります。十二指腸腫瘍の頻度は稀ですが、最近は内視鏡検診の普及などによって発見される機会が増えてきました。治療が必要な十二指腸腫瘍の多くは、胃や大腸の腫瘍と同様に粘膜の表面から発生する上皮性腫瘍(腺腫や腺がん)ですが、粘膜の下から発生する非上皮性腫瘍(神経内分泌腫瘍や消化管間葉系腫瘍など)もあります。通常の内視鏡検査と病理組織検査に加え、内視鏡先端の小型超音波装置でスキャンを行う超音波内視鏡検査や腹部CT/MRIなどを駆使して、それぞれの腫瘍の種類や状態を診断します。治療は腫瘍の部位(乳頭部か非乳頭部か)や腫瘍の種類(上皮性か非上皮性か)、状態(早期か進行した状態か)によって内視鏡的切除か外科的切除が選択されます。
十二指腸はこれまで内視鏡治療が困難な部位とされてきましたが、近年の内視鏡機器と技術の発展に伴い、体への負担が少ない内視鏡治療の守備範囲が広がってきました。とは言え、大きな十二指腸腫瘍に対する内視鏡治療は危険性も高く、経験のある専門医が行うべきとされています。また、外科手術は周囲の膵臓や胆管も切除する大きな手術(膵頭十二指腸合併切除術)となることがあります。十二指腸腫瘍の診断、治療については専門的な医療機関でよく相談することが重要です。