一般のみなさまへ

健康情報誌「消化器のひろば」No.17-3

気になる消化器病 膵臓がん

膵臓がんは60歳以上の高齢者に多く、死亡者数は年間約3万人を超え増加しています。従来、膵臓がんの治療成績は不良でしたが、危険因子が明らかになり、早期診断を含めた画像や病理診断法、また手術・放射線・抗がん剤などの治療法は確実に進歩し、成績の改善が見られています。

膵臓がん

 膵臓がんは80%以上が膵管(膵臓から分泌される消化液が通る管)に発生しますが、膵臓はおなかの奥深くに位置し、血管やほかの内臓に囲まれており、がんの初期は症状が出にくいため早期診断は容易ではありません。早期に発見するには、糖尿病(特に増悪)、慢性膵炎、肥満、喫煙、大量飲酒、膵のう胞、家族歴などの危険因子がある場合、血液検査で膵酵素(アミラーゼやリパーゼ)や腫瘍マーカー(CEA、CA19-9)の上昇がある場合、腹痛などの症状がある場合に、腹部超音波(エコー)がおすすめです。エコーで膵管拡張等があれば、中核病院の外来で行うCT、MRI、超音波内視鏡などで膵臓全体を確認します。なおエコーは、脂肪やおなかのガスのため膵臓が一部しか見えない場合があります。以上の結果、膵臓がんを疑う場合は、内視鏡を用いて腫瘍部分や膵管から細胞や組織を採取する検査を行います。近年、膵臓を詳細に観察可能な超音波内視鏡が早期診断に有用と報告されています。

 各種検査の結果、膵臓がんと確定した場合は進行の程度を決定し、治療方針を立案します。治療には外科的な治療(手術)と内科的な治療(抗がん剤による化学療法、放射線治療)がありますが、外科的切除が治癒可能な唯一の治療法です。がんが膵臓の中に留まる場合は、抗がん剤を先に投与して手術を行う方法が有効とされ、がんが周囲臓器や血管に広がっている場合は、抗がん剤や放射線療法でがんを小さくした後、手術を考慮する場合があります。従来、膵臓がんの外科的切除率は20% 前後でしたが、治療法の進歩により改善しています。ほかの臓器に転移している場合は、抗がん剤を用いた化学療法を行います。昨年からがんの遺伝子を調査し、状況に応じた抗がん剤を選択する治療が一部可能となりました。一方、膵臓がんによる黄疸、胃腸の通過障害を改善する内視鏡を用いたステント治療や、痛み、栄養障害、精神的な苦痛を治療する支持・緩和療法も進歩しており、医師、看護師、薬剤師、臨床心理士、管理栄養士、社会福祉士など多職種が協働で治療に取り組んでいます。がんの検査、治療に不安を感じる場合は、がん診療連携拠点病院の相談支援センターなどでお気軽にご相談ください。

図 膵臓がん


 

JA尾道総合病院
診療部長・内視鏡センター長

花田 敬士

JA尾道総合病院 診療部長・内視鏡センター長 花田 敬士
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