一般のみなさまへ

健康情報誌「消化器のひろば」No.15-6

消化器どうしました?Q&Aこのコーナーでは、消化器の病気や健康に関する疑問や悩みについて、 専門医がわかりやすくお答えします。

Q. バレット食道って何ですか?

図

 胃酸を含む胃内容物が食道に逆流し停滞すると、逆流性食道炎が発症します。逆流性食道炎とは、食道の粘膜にびらんや潰瘍が発生した状態ですが、そのびらんが治癒していく過程で食道の粘膜が通常覆われている扁平上皮ではなく、胃から連続的に伸びる円柱上皮に置き換わった状態をバレット食道と呼びます(図)。バレット食道の患者さんでは、胸やけなどの症状が見られることがありますが、無症状の方も少なくありません。

 バレット食道の診断は内視鏡で行います。バレット食道そのものは生命に大きく関わる状態ではありませんが、食道がん(腺がん)の発生母地となる可能性があり注意が必要です。バレット食道腺がんは、欧米に比較し本邦では罹患率が低いとされていますが、最近、日本消化器内視鏡学会の調査で、3cm 以上のバレット食道から1年間に1.2% がんが発生することが報告され、特に長いバレット食道では、本邦においても注意が必要であることが明らかになりつつあります。バレット食道腺がんに対しては胃がんや食道扁平上皮がんに準じて治療を行います。粘膜の中にとどまっている早期のがんはリンパ節転移を伴わないと一般的に考えられており、がんが粘膜内にとどまる状態で早期発見できれば内視鏡での治療が可能です。そのためバレット食道と診断された場合、過度に心配するのではなく定期的に内視鏡で経過観察を行うことが大切です。

図


 

<回答者>

東北大学病院消化器内科
准教授

小池 智幸

東北大学病院消化器内科 准教授 小池 智幸
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