陽電子放出断層撮影(PET-CT)は、2010年4月より早期胃がんを除くすべての悪性腫瘍の診断に保険が適用となりました。機能性画像として、がんのスクリーニング、術後再発、転移の早期発見や化学・放射線療法の効果判定が可能で、広く利用できます。また、わずかな変化のみのためコンピュータ断層撮影(CT)では見逃された転移巣や新たな悪性腫瘍が、PET検査によって明瞭となることもしばしばあり、CTや核磁気共鳴画像法(MRI)検査と併用することでより精度の高い画像検査を行うことができます。しかし、検査薬であるフルオロデオキシグルコース(FDG)はがんに特異的に集積するわけではなく、良性腫瘍や炎症部にもよく集積することが知られています。また,偽陽性や偽陰性があり、PET-CTのみでは診断目的の検査としては課題が残ります。本稿では、主に膵がんに焦点をあててPET-CTの有用性と限界ならびに問題点について説明します。
進行膵がんの多くは、FDG-PETが集積する(図1)ので膵がんの検出に有用です。しかし、進行膵がん であっても集積が認められない症例も存在する(図2)ため、PETの集積が見られないという点だけで膵がんの存在を否定できません。また,膵がんにより尾側に随伴性膵炎を合併すると、随伴性膵炎部にもPETの集積が認められることが多く、膵がんの範囲が不明瞭となることも知っておく必要があります(図3)。近年は膵がんの化学療法が進歩し、術前化学療法の効果判定にもPET-CT が利用されています。化学療法の効果が認められる症例では、PETの集積は低下ないし消失する傾向があります。しかし、PETの集積が消失していても組織学的にCR(完全奏功)となる症例はまれで、がん細胞が残存していることが少なくありません。
PET-CTを用いた膵がんの診断で問題となる鑑別すべき疾患は、自己免疫性膵炎(IgG4関連疾患)です。PET検査ではSUVmax値に両者で有意差はなく、鑑別が困難な症例も見られます。腫大した膵臓全体に集積を認める場合や、唾液腺などの膵外部位にも病変を認める場合には、IgG4関連疾患をより強く疑いますが、膵がんでも膵臓全体に集積することや、IgG4関連疾患と膵がんが併存することがまれに経験され、ほかの検査と併せて慎重に鑑別を進めることが重要です。