一般のみなさまへ

健康情報誌「消化器のひろば」No.25-8

消化器どうしました?Q&Aこのコーナーでは、消化器の病気や健康に関する疑問や悩みについて、専門医がわかりやすくお答えします。

Q. 便秘薬の上手な使い方を教えてください

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 慢性便秘症の治療の目的は、スムーズに排便できる状態、つまり、大きくやわらかい、バナナ状の便の実現です。そして、便が出ないことや便が出せないといった、不快な便秘の症状を改善することで生活の質を高めることです。生活習慣や食事療法の改善が得られない場合は、薬の治療が考慮されます。最近は新しい便秘治療薬の開発により、便秘症の治療法に大きな変化が見られました。

 最初に検討する薬は、酸化マグネシウム、ポリエチレングリコール、ラクツロースなど、浸透圧を利用して腸内に水分を引き寄せる薬です。100年以上前から日本で使用されている酸化マグネシウムは、腸にやさしく効果的ですが、高齢者や腎機能が低下している患者さんが長期にわたって使用すると、致命的な高マグネシウム血症を来すリスクがあり、注意が必要です。

 これらの薬が効かない場合は、新しい便秘薬を検討します。大腸の胆汁酸トランスポーターを阻害し、腸内に水分を引き寄せたり腸の動きを促進したりする薬や腸内の塩素イオンの量を増やして腸に水を引き寄せる効果を発揮する薬が候補になります。

 一方、刺激性下剤は、1回の服用で効果が得られるために患者さんの満足度が高いですが、習慣性を引き起こす可能性があります。継続使用は大腸の動きや形を変え、治りにくい便秘を引き起こすことがあるため、必要最小限の使用に留め、頓用または短期間での投与が望まれます。

 市販の便秘薬の多くは、酸化マグネシウムや刺激性下剤に分類されます(図)。長期的な使用が必要な方は、かかりつけ医に相談されることをおすすめします。

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<回答者>

九州大学大学院医学研究院
病態制御内科学 准教授

伊原 栄吉

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