一般のみなさまへ

健康情報誌「消化器のひろば」No.14-8

消化器どうしました?Q&Aこのコーナーでは、消化器の病気や健康に関する疑問や悩みについて、 専門医がわかりやすくお答えします。

Q. 自己免疫性膵炎について教えてください。

図

自己免疫性膵炎は高齢の男性に多い免疫反応の異常で、膵臓が腫れる病気です。お酒の飲み過ぎや胆石などが原因で発症する急性膵炎や慢性膵炎で見られるような激しい腹痛を起こすことは少なく、しばしば胆管が詰まって体が黄色っぽくなる黄疸が見られます。半数の例で糖尿病を合併するため、糖尿病の悪化に伴い見つかるケースもあります。

自己免疫性膵炎の典型例では膵臓が全体的に腫れますが、局所的に腫れる場合は膵臓がんと間違われやすく、両者を鑑別することが非常に重要です。自己免疫性膵炎では、膵液が流れる主膵管が狭くなるのが特徴的です(下図)。また、血液中の免疫タンパクの「IgG4」が増加します。さらに、唾液腺、涙腺やリンパ節など膵臓とは別の臓器もしばしば炎症を起こして腫れ、胆管も高頻度に壁が肥厚して狭くなります。現在では「IgG4関連疾患」と呼ばれる、IgG4が関連した全身性疾患と考えられています。炎症のある組織には、IgG4を分泌する細胞が多数集まっています。自己免疫性膵炎は、CTやMRIなどの画像検査、膵臓や胆管の内視鏡検査、IgG4の血液検査、膵臓の組織検査などにより診断します。

治療は、炎症を抑えるステロイド(合成副腎皮質ホルモン)の内服が良く効き、膵臓を含めて他の腫れた臓器も数週間で劇的に改善します。しかし、ステロイドの内服を止めた後に病気がぶり返すことが時々あるため、再燃防止のために少量のステロイドの内服をしばらく続けるケースが一般的です。


<回答者>

東京都立駒込病院
副院長(消化器内科)

神澤 輝実

東京都立駒込病院 副院長(消化器内科) 神澤 輝実近影
Share on  Facebook   Xエックス   LINE