FOCUS 新たな専門医制度とは
各学会の専門医資格の認定基準が統一されより良質な医療の提供を目指す制度へ
これまでの専門医制度は、たとえば内科専門医ならば内科学会、外科専門医ならば外科学会というように、各学会が独自で運用する認定プログラムを修了することで専門医資格を取得することができました。そのため、専門医の質が一定ではないという問題がありました。また、2002年より開業医は専門医資格を広告掲載しても良いことになり、これを契機に専門医制度の種類が増加し、細分化が進んできました。こうした状況の中、専門医の質は保証されているのか、という議論が挙がり、検討を重ねた結果、新たな専門医制度の導入が決まりました。
新専門医制度は専門医の質を高め、良質な医療が提供されることを目的としており、従来の各学会が“運用する”認定プログラムは、第三者機関である日本専門医機構で運用されることになり、それまで各学会によってバラバラであった専門医資格の認定基準が統一されることになりました。
医学部を卒業し医師国家試験に合格すると、医師は約2年間の初期臨床研修を行います。そして初期臨床研修が修了すると、ほとんどの医師が専門医を目指して3~ 5年間の専門医研修プログラムによる研修を行います。従来、この専門医研修を行う医師を後期研修医と呼んでいましたが、2018年4月から始まった新専門医制度では、専門医研修プログラムに登録し、研修中の医師を専攻医と呼ぶようになりました。
これまで研修医といえば、初期研修医と後期研修医の両方を指していましたが、新専門医制度によって研修医という言葉は初期研修医のみを示すようになります。そして後期研修医という呼び名はなくなり、それに代わる呼び名として専攻医が使われるようになりました。
新専門医制度は、内科や外科など19の基本領域で構成される基本領域専門医と、基本領域専門医の取得後に選択できるサブスペシャルティ領域専門医の二段階制となり、専攻医はまず基本領域から専門医資格の取得を目指すことになります。
基本領域専門医の19診療科領域は、より専門性の高いサブスペシャルティ領域(23領域)の専門医を取得するためにも重要な資格となります。サブスペシャルティ領域の専門医を取得するためには、関係のある基本領域の専門医を取得している必要があります。たとえば日本消化器病学会の専門医を取得したい場合は、基本領域で内科専門医や外科専門医資格などを取得していることが条件になります。
当初、内科関連13領域と外科関連4領域のサブスペシャルティ専門医について、基本領域と並行して進める「連動研修」が認められていましたが、基本領域研修がおろそかになる懸念などから、連動研修は現在見送られています。また、新専門医制度は、当初、2017年4月から開始される予定でしたが、専門医研修を受けられる病院が都市部に偏り、地方の医師確保が難しくなる問題などが浮上したため1年延期されたという背景があります。
このように、未だ流動的な部分はありますが、より良質でわかりやすい医療の提供を求めて新専門医制度は動いています。