一般のみなさまへ

健康情報誌「消化器のひろば」No.15-8

消化器どうしました?Q&Aこのコーナーでは、消化器の病気や健康に関する疑問や悩みについて、 専門医がわかりやすくお答えします。

Q. 神経内分泌腫瘍について教えてください。

図

 神経内分泌腫瘍(NET)とは、ホルモンやホルモンに似た物質をつくる細胞が悪性化したものです。この細胞は全身の様々な場所にあるため、この腫瘍は膵臓や消化管や肺をはじめ、いろいろな臓器から発生する可能性があります。ホルモンを作るNETは、ホルモン症状を発症することがあります。たとえば、インスリノーマは低血糖で意識をなくしますし、VIPオーマは1日50回にもおよぶ激しい下痢、ガストリノーマは胃や十二指腸の潰瘍、消化管や肺のNETが作る物質は、顔が赤くなり、下痢や心不全を伴うことがあります。またNETの中には遺伝子が原因で家族性に発症するものがあり、NETを早期に診断するきっかけになります。

 NETは希少疾患と呼ばれていますが、近年増加傾向にあり、また50歳代と非常に若くして発症し、転移を起こす頻度が高い悪性腫瘍として知られています。たとえば膵NETは初診時に半分ほどが末期であり、遠隔転移を起こすと5年生存率が39%と報告されています。Apple社のCEOであったスティーブ・ジョブズ氏が膵NETの肝転移で亡くなったと報道されました。

 診断は多くの場合、検診で見つかって、専門施設に紹介され、専門的な検査が行われます。治療は手術が中心ですが、最近になって分子標的療法や放射線内用療法(PRRT)(図)などの新しい治療方法が開発され、治療の選択肢が多くなり、手術の適応範囲がさらに広がりました。PRRTは日本でも治験が始まっていますが、点滴で行う次世代の放射線治療として注目が集まっています。


<回答者>

東京医科歯科大学肝胆膵外科
講師

工藤 篤

東京医科歯科大学肝胆膵外科 講師 神工藤 篤近影
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