超音波検査は、体の中を無害で、さらにCT・MRI検査より優れた解像度で観察をすることが可能な検査です。しかし、プローブと言って患者さんに当てる部分が小さいために一度に描出できる範囲が限られる点で客観性が低いという短所があり、有効活用されていない感もあります。特に人間の最大臓器である肝臓においては、分割して観察を行う必要があるため住所でいう番地(肝臓では区域と言います)を決め、その番地ごとに見落としがないように確認をしながら検査を行っています。これは、何か所見がある場合に正確に第三者に伝えるためにも重要となります。
最近の超音波診断装置は磁気センサーを用いて同時に供覧できる装置があり、これを用いることで肝臓の解剖を誰もがわかりやすく表示することが可能になります。私たちはこれを用いて研修医の教育や患者さんに説明をする際に活用しています。図1は体を輪切りした断面のCTと超音波画像です。表示方法がそれぞれ異なるので注意が必要となります。臓器を隅々まで観察するためにも番地は必要で、パートごとに観察をしていきます。この番地は肝臓に流れている門脈という血管の走行により分けるものが広く用いられています。そして各番地の境は目印となる肝静脈や肝臓の周囲にある結合組織としています。超音波検査は骨の下は観察できず肋骨の間や下から観察を行うため、図1aと異なり図1bの右の肋骨の間から観察した画像では肝臓を斜めに切るので困惑する人も多くなります。そこで、専用ソフトを用いて区域の色分けをしたCT画像とリアルタイムで並列表示をしながら超音波検査を施行することで、どの方向から観察しても区域は把握できるようになります(図2)。
このように超音波診断装置も進化を続け、他画像も含む3次元情報を扱うことも可能であり、精密検査としても威力を発揮しています。超音波検査の用途はかなり広くなっており、その有用性を患者さんに還元するためには、装置の普及と検者のやる気が重要であると考えています。
一般のみなさまへ
健康情報誌「消化器のひろば」No.20-5
日本大学病院消化器内科
超音波検査室室長
小川 眞広