このコーナーでは、消化器の病気や健康に関する疑問や悩みについて、 専門医がわかりやすくお答えします。
Q. コーヒーは肝臓にいいですか?
コーヒーは健康に悪いといわれていた時期もありましたが、最近の研究から「コーヒーは健康にいい」、特に「肝臓にいい」ことが続々と明らかになってきています。コーヒーを飲むことで肝がんを予防する効果があることは、様々な国の多くの研究で証明されてきました。日本でも、国立がん研究センターの研究で、明らかな肝がん予防効果が示されています。40~69歳の日本人約9万人について、コーヒー摂取頻度によってグループに分けて、その後の肝がんの発生率を比較したところ、コーヒーの摂取量が多いほど肝がんの発生率が減ることがわかりました(図)。コーヒーをほとんど飲まない人と比べて、毎日飲む人は肝がんの発生リスクが半分に、1日5杯以上飲む人では4分の1に低下していました。緑茶ではこのような肝がん予防効果は示されていませんので、カフェインではない他の成分によるものと考えられます。ほかにも、コーヒー摂取によって、肝硬変の原因である肝線維化が進むのを予防する効果や、肝臓病で死亡するリスクを減らす効果も報告されています。
コーヒーをたくさん飲むとほかの病気が悪くなるのではないかと心配になると思いますが、1日5杯未満のコーヒー摂取によって様々な病気を合わせた死亡全体のリスクが減ることが明らかになっています。ただし、1日5杯以上では死亡全体のリスクを減らす効果が弱くなり、女性の心臓病での死亡は増やしてしまう結果でした。これらの結果から、1日1杯以上4杯までのコーヒー摂取は肝がんだけではなく多くの病気に対して良いといえます。「コーヒーは健康にいい」というのは本当であり、特に肝がんの予防効果はほぼ確実でしょう。