一般のみなさまへ

健康情報誌「消化器のひろば」No.25-3

気になる消化器病 サプリメントによる肝障害

サプリメントはほとんどの場合、無害ですが、時に身体に害をもたらすことがあります。サプリメントによる肝障害も決して珍しくありません。サプリメントや健康食品などに頼るのではなく、栄養のバランスが良い食事を朝昼晩きちんととり、適度な運動をすることをおすすめします。

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 この春、ある有名な会社の機能性表示食品によって腎臓に障害が起こったという健康被害が大きく報道されました。皆さんは、このニュースをどのように受け取られましたでしょうか。腎臓と肝臓との違いはありますが、実はこの種のいわゆる健康食品やサプリメントによる肝障害(肝機能検査値が異常に高くなることを肝障害といいます)はそれほど珍しくはありません。私たちは全国の医療機関に依頼し2008年から2018年までに国内で発症した薬などによる肝障害の患者さんのデータを検討したことがありますが、サプリメントによって肝障害が起こった患者さんは全体の9%に上っていました。ただ、肝機能検査値が異常に高くなっても自覚症状がほとんどない方も多く、その場合は病院に行かず検査を受けないので肝障害に気がつきません。サプリメントで肝障害を起こしている方は、実際にはもっと多いと思われます。

 サプリメントは薬局やコンビニで簡単に購入でき、ビタミンやミネラル、その他健康に良い成分を効率よく摂取できるというイメージをお持ちの方が多いと思います。確かにほとんどの場合、サプリメントには害がありません。しかし、私たち医師の立場からは、サプリメントの服用はあまりおすすめできません。サプリメントの摂取が医学的に必要という状況はほとんど想定できないこと、過剰に摂取した場合かえって健康を害する可能性があることなどがその主な理由です。また、今回明らかになった健康食品と同様、サプリメントもその品質が十分に管理されておらず、健康を害する成分が入っている可能性がゼロではないのです。病院で処方され薬局で購入する医薬品は製造工程が厳重に管理され、品質管理が行き届いています。もし肝障害など副作用が起こった場合は医薬品を製造している会社および私たち医師は速やかにその副作用について国に報告する義務があります。一方、サプリメントには、安全を担保するそのようなシステムがありません。

 サプリメントや健康食品に安易に頼るのではなく、栄養のバランスが良い食事を朝昼晩きちんと取り、適度な運動をする。現代の生活ではこのような当たり前のことがなかなか難しいことも事実ですが、この当たり前の生活習慣を守ることが、消化器だけではなく身体全体の健康を保つ一番の近道です。

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帝京大学医学部内科学講座
教授
田中 篤

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