近畿支部第123回例会 司会の言葉
シンポジウム(公募)
「消化器領域における指定難病疾患の現状と課題(IBD含む)」
司会 柿本 一城(大阪医科薬科大学病院 消化器内科)
塩川 雅広(京都大学大学院医学研究科 消化器内科学)
わが国では2014年に難病法が成立し、消化器病領域では炎症性腸疾患、難治性の肝疾患、胆膵疾患などが指定難病となっている。これらは希少疾患という側面もあり、発病の機構が不明であり、完治に至る治療法はなく患者は長期にわたる療養が必要となる。そのため、疾患データの収集、病因・病態のさらなる解明、新規治療方法の開発が強く望まれている。また、拠点病院との医療連携や専門医の育成といった社会的な課題も存在する。
本シンポジウムでは、消化器領域における指定難病を対象として、臨床経験から基礎的検討、社会的取り組みまで、広く演題を募集し、多種の疾患を横断的に討議することで難病診療のさらなる質の向上に寄与したい。具体的には、炎症性腸疾患、肝疾患(自己免疫性肝炎、ウィルソン病など)、胆膵疾患(原発性胆汁性胆管炎、原発性硬化性胆管炎など)、好酸球性消化管疾患、IgG4関連疾患など、全ての消化器領域の指定難病を対象とする。
シンポジウム(公募)
「肝細胞癌に対する治療戦略」
司会 多田 俊史(神戸大学大学院医学研究科 内科学講座 消化器内科学分野)
石井 隆道(京都大学大学院医学研究科 消化器腫瘍制御・臓器再生外科)
本シンポジウムでは、最近提案された腫瘍学的切除可能性分類を考慮した肝切除や、薬物療法後に実施されるconversion surgeryの適応判断について取り上げます。また、ラジオ波・マイクロ波焼灼療法、肝動脈化学塞栓術などの局所治療に加え、肝動注化学療法、免疫チェックポイント阻害薬、分子標的薬を中心とした薬物療法の進展についても議論いたします。さらに、粒子線治療や定位放射線治療といった高度な放射線治療技術の活用、肝細胞癌に対する肝移植の現状と課題についても考察します。実臨床で増加する非B非C肝癌を含む多様な症例に対応するためには、癌の進展と肝予備能、さらにバイオマーカーを踏まえた治療戦略の最適化についての議論も不可欠です。ここ関西の地から、肝細胞癌治療の未来を切り拓くために、皆様の積極的なご提案と発表を心よりお待ちしております。
パネルディスカッション(公募)
「胆膵疾患診断・治療の最前線」
司会 池浦 司(関西医科大学 内科学第三講座)
亀井 敬子(近畿大学医学部 外科学教室 肝胆膵部門)
北川 洸(奈良県立医科大学 消化器・代謝内科)
膵癌・胆道癌は難治性腫瘍であり、予後改善のためには従来の画像検査に加えEUSやERCPを用いた早期診断が重要となる。治療では、術前化学療法やconversion surgeryが日常診療に普及し、遺伝子パネル検査によるprecision medicineは予後の改善が期待されている。急性膵炎では、Pancreatitis Bundle 2021に沿った診断・治療が周知され、後期合併症である感染を伴う被包化壊死に対しては、内視鏡的もしくは外科的なステップアップ・アプローチが推奨されている。慢性膵炎においても、EUSにより早期慢性膵炎の診断が可能となり、有痛性の症例や仮性嚢胞などの合併症を伴う症例では、内科的・外科的アプローチが選択されている。また高齢化とともに増加している胆管炎・胆嚢炎診療においては、基礎疾患などの背景リスクを考慮した治療戦略が実践されている。
本セッションは内科・外科合同セッションであり、胆膵疾患の診断・治療の最新データを発表して頂き、垣根を超えた議論を行いたい。症例数を問わず、幅広い演題応募を期待している。
パネルディスカッション(公募)
「緊急消化管内視鏡診療の現状と課題」
司会 木下真樹子(国立病院機構南和歌山医療センター 消化器科)
阿南 隆洋(淀川キリスト教病院 消化器内科)
夜間や休日などの時間外に診療を行う消化器救急における代表的な疾患として、消化管出血があり、病態に応じて緊急内視鏡治療の適応となる。近年の内視鏡機器及び技術の進歩により、出血点の同定に適した画像強調内視鏡やgel immersion endoscopyに代表される新技術の開発や手技の工夫がなされており、大腸憩室出血においてはバンド結紮術が導入されるなど、内視鏡的止血法も日々進歩している。また、大腸の悪性狭窄に対するステント留置や、消化管軸捻転に対する内視鏡下整復、内視鏡手技に伴う消化管穿孔に対する縫縮など、緊急消化管内視鏡診療を要する病態は様々である。
適切な緊急消化管内視鏡実施のタイミングや周術期管理、診断へのストラテジー、内視鏡手技の工夫、内視鏡的アプローチの限界と代替治療への移行など、医師の働き方改革の時代に適した緊急消化管内視鏡診療のマネジメントについて、現状、今後の課題などを含めて活発にディスカッションする機会としたい。
ワークショップ(公募)
「消化管腫瘍に対する内視鏡診療・低侵襲手術」
司会 田原 智満(関西医科大学 内科学第三講座)
植村 守(大阪大学大学院医学系研究科 外科学講座 消化器外科学)
米田 頼晃(近畿大学医学部 消化器内科)
低侵襲消化管内視鏡治療は、咽頭から大腸に至る各部位で早期がんや前がん病変に対応する技術として発展してきました。ELPSやPOEM、DLECS、内視鏡的全層切除術などにより、難易度の高い臓器や良性疾患への応用が進み、腹腔鏡手術との併用も行われています。また、TXIやRDIといった画像強調観察技術や縫合法の開発が診断・治療を支え、Modified EMRやESDによる下部消化管の治療も患者のQOL向上に貢献しています。炎症性疾患や狭窄に対するバルーン拡張やステント留置、AIによる診断支援も進展しており、消化管外科でもロボット支援手術が急速に普及しています。ICG蛍光法やAIによる手術ナビゲーションなど、新技術の導入も低侵襲手術分野の革新を促進しており、今後の課題と展望が期待されています。
本セッションでは、これらの動向を踏まえ、各分野における内視鏡診療・低侵襲手術の状況を提示いただき、今後の課題や展望についても議論を深めていただきたいと思います。