肝臓の病気には肝炎ウイルスによるものやアルコールや肥満による脂肪肝、その他様々な種類があります。しかしどのような慢性肝臓病でも多くは慢性肝炎を長期間患い、その結果、肝臓組織で線維化が起きて肝臓が徐々に硬くなり、最終的には肝硬変になります。肝臓の線維化の進展を調べるには、おなかの皮膚の上から針を刺して肝臓の組織の一部を採取する肝生検を行います。肝生検によって肝臓の線維化を調べ、全くないF0から肝硬変になっているF4まで、およそ5段階に分けて診断されます。肝生検は診断の確定や薬による治療効果の判定に重要ですが、患者さんのご負担が大きく、また繰り返しできるわけでもないので、もう少し簡単に肝臓の線維化の進行具合を検査できないかということで開発されたのがエラストグラフィーという機器です。
痛みがなく正確性の高い検査
エラストグラフィーは硬い組織には音が早く伝わり、軟らかい組織では音がゆっくり伝わるという振動波の速度を測ることで硬さを調べる機器で、肝生検をしなくても硬さを調べることでおおよその線維化の重症度がわかります(図1)。肝臓で線維化が進んでくると肝臓は硬くなりますので、肝臓の硬さ=肝硬度が高くなります。肝臓の検査で使われるエラストグラフィーはおなかの皮膚の上から音による振動を出してその音の伝わり方を調べ、肝硬度を調べます。現在我が国で使われているのは超音波タイプとMRI タイプの2種類です。超音波タイプはベッドわきに置けるくらい小型で検査も5分程度と短く、痛みもありませんので繰り返し検査を受けることができます。超音波タイプのうち、世界で最も普及しているのはフィブロスキャン®というエラストグラフィーです。MRIについているエラストグラフィーはMRエラストグラフィーといって我が国でも普及しております。これも簡単な検査ですが、肝臓全体の硬さを一目瞭然に調べることができ、非常に正確性が高い検査です(図2)。
定期的な検査で肝硬度をチェック
最近では脂肪肝などの慢性肝臓病の患者さんが増えており、エラストグラフィーで肝臓の線維化の状態を調べることが増えてきました。重要なことは1回きりの検査ではなく定期的に検査を受けて、自分の肝臓の線維化の状態を肝硬度としてチェックすることです。