一般のみなさまへ

健康情報誌「消化器のひろば」No.21-7

消化器どうしました?Q&A

このコーナーでは、消化器の病気や健康に関する疑問や悩みについて、 専門医がわかりやすくお答えします。

Q. 大腸がんに予防薬があると聞きましたが本当ですか?

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 大腸がんの予防薬の有力候補としてアスピリンがあります。アスピリンは痛み止めとして開発された薬ですが、痛み止め効果がない少量の100mg(低用量アスピリン)を1日に1回服用すると血小板が固まりにくくなる作用があるため、心臓や脳の血管が詰まって心筋梗塞や脳梗塞になった人は、再発を予防するために低用量アスピリンを服用しています。その低用量アスピリンを長期間服用すると、大腸がんになりにくいことが知られるようになってきました。また、大腸がんの前がん病変である大腸腺腫も低用量アスピリンでその発生が予防できることが、いくつもの臨床試験で証明されました。

 これまでの研究からアスピリンが大腸がんの発生を予防することは間違いないでしょう。しかし、アスピリンを服用すると消化管粘膜を荒らしたり、出血が止まりにくくなったりするため、大腸がんを予防する効果と副作用のバランスを考えると、まだ、すべての人が大腸がん予防のためにアスピリンを飲むことはおすすめできません。

 これまでの研究で、タバコを吸う人がアスピリンを服用すると、逆に大腸がんの発生を促進することがわかりました。アスピリンを飲むときには、必ず禁煙しましょう。また、大量に飲酒する人、血液検査で肝機能が悪い人、中性脂肪が高い人は、アスピリンによる大腸がん予防効果が弱くなることもわかりました。アスピリンを服用する場合には、飲酒をするなら適度な量とし、肝機能や中性脂肪を正常化するような生活を心がけることが必要です。アスピリンが効きやすい遺伝子のパターンもわかってきました。いま、アスピリンが効きやすく副作用が出にくい人を生活習慣や遺伝子検査などで絞り込むために、大規模な臨床試験が進行中です。この試験の結果が判明すれば、大腸がんを予防するためにアスピリンを服用する時代も来ることが期待されます。


 

<回答者>

京都府立医科大学大学院医学研究科
分子標的予防医学 特任教授

石川 秀樹

京都府立医科大学大学院医学研究科 特任教授 石川秀樹 近影
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