一般のみなさまへ

健康情報誌「消化器のひろば」No.22-5

 大腸CT検査(CTC:CT Colonography)は、Virtual Colonoscopy とも呼ばれ内視鏡を挿入することなくバーチャル(仮想)に大腸内視鏡のごとく大腸の中を観察することができる、2012年に保険適用となった新しい検査法です。肛門から管を約5~6cm挿入し、管より炭酸ガスを注入して大腸をふくらませ CT撮影を行います。撮影された画像をコンピュータ(3D医用画像処理ワークステーション)処理することで、大腸内視鏡検査や注腸検査のような画像(図1)を作成し大腸を観察することができます。 この3D画像は、実際の大腸粘膜を見ているのではなく、大腸内の炭酸ガスを鋳型として大腸粘膜を描出するイメージです。

大腸の検査はつらい、怖いというお考えをお持ちの方も多いかと思いますが、大腸 CT検査は大腸内視鏡検査より苦痛が少なく安全に大腸を調べることができます。大腸内視鏡検査では腸をきれいにするため前処置に約2Lの下剤の飲用が必要です。一方、大腸 CT検査ではタギング法という経口造影剤を内服する方法により、下剤の量が約150~200ml と1/10に軽減されます。また、CT撮影は10秒を数回で総検査時間も10~15分と短時間で済みます。炭酸ガスによるおなかの張りはあるものの苦痛は少なく、重篤な偶発症はごく稀です。さらに、大腸の狭窄や術後の癒着による痛みなどで大腸内視鏡の挿入が困難な場合でも、全大腸を検査することが可能です。

診断能力は、平坦な病変や5mm以下の小さな病変では大腸 CT検査が大腸内視鏡検査に比べてやや劣りますが、治療が必要とされる6mm以上の病変ではほぼ同等です。また、この検査では腸を任意の方向から観察できるため、内視鏡では見えにくいヒダの裏側や屈曲の強い部分の診断も可能です。しかし、病変が見つかった際に生検(細胞の検査)や、ポリープ切除などの治療はできず、後日大腸内視鏡検査を行う必要があります。また CT撮影を行うため放射線被ばくの心配がありますが、機器の進歩により被ばくを最小限に抑えた低線量撮影が行われており、検査を受けるメリットがはるかに大きいとされています。

大腸の検査は負担感が強く、受診をためらわれる場合もあると思います。大腸 CT検査は苦痛が少なく比較的低侵襲で、受容性の高い検査方法です。検査実施施設は徐々に増えていますので、お近くの各医療機関にお問い合わせください。


 

医療法人山下病院 理事長
服部 昌志

Share on  Facebook   Xエックス   LINE