十二指腸非乳頭部腫瘍は、胆汁や膵液の出口である十二指腸乳頭部以外の部位から発生する腫瘍です。腫瘍の性質や頻度が乳頭部から発生する腫瘍とは異なるため、区別されています。発生する頻度は比較的まれで、胃や大腸の腫瘍に比べると100分の1程度と言われています。
十二指腸非乳頭部腫瘍は以前は発見される頻度も少なく、多くの場合は長年様子を見ていてもあまり変化が見られない良性の腺腫であるため、治療の必要すらないと思われていました。しかし、急に大きくなって進行がんになった例が報告されたり、発見される機会が増えてきたため最近注目されています。発見数が増えた理由はまだハッキリしませんが「内視鏡検診が普及したから」「食生活が欧米化したから」「ピロリ菌感染低下により環境が変わったから」などという意見が出ています。まだまだ患者さんの数が少ないため原因解明は難しい状況ですが、これらが合わさった複合的な要因なのではと思われます。
十二指腸非乳頭部腫瘍のほとんどは、粘膜から発生してその中にとどまる浅い腫瘍です。まれに粘膜の下やさらにその下の筋層まで及ぶ深いがんも見られますが、いずれも無症状であり、症状で気づかれることはほとんどありません。もちろん末期状態の進行がんでは、食べ物が詰まって食べられなくなったり、出血して吐血ということもありますが、このような方は極めてまれです。したがって、大多数の方は無症状で内視鏡検査の際に偶然見つかっています。
一般的に浅い腫瘍は転移の危険性がほとんどないため、胃や大腸では内視鏡切除が最も負担の少ない治療法として普及しています。一方、十二指腸では内視鏡の操作性が悪く壁も薄いため治療が難しく、また膵液や胆汁が流れ込んでくるため、切除後に出血したり穴が開くというトラブルが多いため内視鏡治療が敬遠されてきました。しかし様々な工夫や技術的進歩により、十二指腸でも粘膜にとどまる浅い腫瘍を内視鏡的に切除して、傷口を内視鏡で縫い縮めることにより、問題なく治療できるようになってきています。ただし、胃や大腸とは異なり十分な実績があり確実に治療できる施設は限られています。したがって、十二指腸腫瘍と診断された場合には、「近いから」とか「大病院だから」という理由で受診先を選ぶのではなく、必ず治療実績を確かめ、十分な経験と技量を持った専門家がいる病院を受診することを強くお勧めします。