日本人の約半数がかかる「がん」の中でも、患者数の多さから不安視されているのが「大腸がん」です。「大腸ポリープ」とは、大腸の内側の粘膜が一部盛りあがった病変の総称ですが、そのうち腫瘍性ポリープが大腸がんと強く関わりがあります。その多くは大腸の精密検査である内視鏡検査で発見されます。
我が国で1年間にがんで死亡した人は約52,000人(2020年)で、臓器別では「大腸がん」が男性で上から3位、女性では1位と日本人は大腸がんで亡くなる可能性が高いです。一方、この冊子を手に取っていただいた読者ご自身、もしくは身内やお知り合いに「内視鏡検査で大腸ポリープが見つかった、内視鏡で取ってもらった」という方がおられるのではないでしょうか。
「大腸ポリープ」はその組織の違いにより腫瘍性と非腫瘍性ポリープに大きく分けられ、腫瘍性ポリープはさらに悪性(がん)と良性腫瘍(腺腫)に区別されますが、良性腫瘍(腺腫)も時間が経てば大腸がんとなる可能性があります。このことから、発見された腺腫を切除すると大腸がん発生の予防になることが知られております。一方、大腸ポリープはほとんどの場合、患者さんが自覚する特有な症状はなく、特に小さいポリープの場合はほぼ無症状ですから、早期発見のためには大腸がん検診を受けていただく必要があります。市町村や職場で行われている便潜血検査で陽性となると、がんやポリープがある可能性がより高くなりますので、精密検査としての内視鏡検査を受けていただくことが勧められます。また、家族歴や既往歴から大腸ポリープが疑われる場合、あるいは血便や便が細い、腹痛などの症状がある患者さんに対しても同様です。
大腸内視鏡検査はポリープを直接みることができ、大きさや形だけでなく病変表面の血管模様などから腫瘍性ポリープ(切除が必要なポリープ)か、がんの場合その深さがどうかを判定することができます。その場合、80倍に拡大してポリープの表面構造を見ることができる拡大内視鏡を用いることで診断の精度を上げることができます。さらには、内視鏡で切除できる場合には直後にポリープを切除することも可能です(図)。それにより、大腸がんの予防および低侵襲治療が期待されます。