FOCUS 遠隔医療と医師の働き方改革
医療現場の変化 国民一人ひとりの理解を
2024年4月より医師の働き方改革が開始されました。働き方改革は、すでに大企業では2019年に、中小企業でも2020年に開始されており、5年間の猶予を持って医師にも導入されました。
我が国の国民皆保険制度は優れた制度であり、国民はいつでもどこでも誰でも等しく受診できるという特徴があるため、コンビニ受診(緊急性の低い患者さんが休日や夜間に救急外来を受診すること)につながりやすいことが指摘されています。世界と比較すると、日本の医師は人口当たりの数が比較的少なく、また病床数や国民の受診回数は多いため、結果として医師の長時間労働につながっているのが現状です。医師の働き方改革は医師の労働時間に上限を設ける制度であり、医師も自分自身の健康管理をすることで、安心・安全な医療を継続して提供することが可能となる観点からは優れた制度であるといえます。
医師の働き方改革で労働時間に制限がかかる中で、問題となるのは、医師の診療科偏在・地域偏在の現状です。医師が都会に集中し、地方では相対的に少ない現状があります。地方では高齢化と過疎化が進んでおり、比較的少数の医師が効率よく働くためにも、ITを活用した遠隔医療で対応する必要があります。
近年、情報通信技術の発展ならびに地域の医療提供体制および医療ニーズの変化に伴って、情報通信機器を活用した診療(オンライン診療)、その他の情報通信機器を活用した健康増進、医療に関する行為(遠隔医療)については、ますます需要が高まっています。
遠隔医療の一例をあげると、現在、日本外科学会が取り組んでいる事業の一つに、都会と地方を情報通信技術で結び、都会にいるロボット手術に熟練した外科医が、遠隔地の外科医に指導しながら行うロボット支援手術の実証実験が進行中です。十分な医師数を確保することができない地方においても最新の医療を導入するうえで、この遠隔医療の実現は魅力的ではありますが、まだまだ超えないといけないハードルが存在します。
また、医師の働き方改革が実施されるうえで、医療の現場では、これまでと異なる体制になることに関して、国民一人ひとりが理解し協力する必要があります。たとえば、患者さんの家族に病状などについて説明する際、原則的に平日勤務時間内に説明することになります。また、主治医制からチーム制への変更に伴い、特に、夜間・週末の時間帯には、異なる医師・医療者が対応することがあり得ます。
厚生労働省は2023年12月1日に「医師の働き方改革」特設サイト(https://iryouishi-hatarakikata.mhlw.go.jp/)を公開しているので、参照していただくとより理解が深まると思います。